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ノーベル賞に山中伸弥・京大教授

親交ある2人語る

80年代の冗談が本当に…岡野栄之(おかの ひでゆき)・慶応大教授


岡野栄之・慶応大教授

 1980年代に、皮膚細胞に遺伝子1個を入れて筋肉細胞に変化させた研究があった。「将来、皮膚細胞から神経細胞ができるのかな」と冗談で話していたが本当になってしまった。

 マウスのiPS細胞(新型万能細胞)ができて、まだ6年。再生医療への応用に向けた研究も世界中で進み、臨床に手が届きそうな状況だ。

 私は脊髄損傷の治療に取り組んでいる。2006年8月に山中さんたちがマウスでiPS細胞を作ったという論文を発表し、真っ先に共同研究を始めた。10年5月ごろには、ヒトのiPS細胞から作った神経幹細胞を脊髄損傷のサルに移植して治療効果を確認した。

 山中さんは、あらかじめたくさんの種類のiPS細胞を作って保存しておく構想を進めている。実現したら真っ先に活用し、臨床応用への準備を進めたい。

目的に向かって一直線…阿形清和(あがた きよかず)・京都大教授


阿形清和・京都大教授

 山中さんと最初に出会ったのは約10年前。山中さんはマウスのES細胞(胚性幹細胞)で、万能性に関わる遺伝子を探していた。英国や日本の理化学研究所などのチームがしのぎを削っていて、山中さんはやや出遅れている印象だった。だから、2006年にiPS細胞(新型万能細胞)ができたという山中さんの発表を知った時は、本当にびっくりした。本人に作製方法を教えてもらって、「ええっ、そんな実験やっちゃうの?」と、また驚いた。

 ライバルたちは、万能細胞の中で遺伝子が働く仕組みを解明するため、関係する遺伝子を一つずつ壊して影響を確かめていた。山中さんの方法は逆。重要そうな遺伝子を、全部まとめて細胞にぶち込んでしまった。わかってみれば、それが最も正しい方法だった。目的に向かって一直線に突き進む、彼らしい方法だ。

2012年10月9日  読売新聞)

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