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Vol.400 スズキ・ワゴンR優れた実燃費支える新技術試乗したワゴンR FXリミテッド(2WD)は、JC08モード28.8km/Lの燃費性能だ
自然吸気エンジンは52馬力だが、軽量化された車両のおかげで、気持ちよく加速する
後席背もたれは、ワンタッチで前方へ折りたため、広がる荷室の床は真っ平らになる
軽自動車といえども、後席はゆったりできる広さがある
メーターもハンドルもスイッチも、シンプルで操作しやすいデザインだ
ワゴンRの運転席は、クッションの厚みが感じられ、また運転しやすい姿勢で座らせる
減速時に発電が開始されると、インジケーターランプで、エネチャージが働いていることを知らせる
より精悍(せいかん)な外観となるワゴンRスティングレー。こちらはターボエンジン車のTグレード
スズキの軽自動車「ワゴンR」が、フルモデルチェンジをした。同車は、1993年に初代が誕生してから今年7月末までに、累計377万台以上の販売台数を記録した人気車種である。新型は、その5代目にあたる。 新型ワゴンRの目玉は、軽ワゴンクラスナンバーワンの燃費性能だ。排気量660ccの自然吸気エンジン車(2WD)で、JC08モード28.8km/L。また「ワゴンRスティングレー」に搭載されるターボエンジン車(2WD)でも、JC08モード26.8km/Lと優れた低燃費値である。 加えて、開発陣が強調するのは、実用での燃費の良さだ。カタログに記載される数値がいくら優れていても、使っているときの燃費性能がかけ離れていたのでは、やがてスズキへの信頼さえ失いかねない。 そこで、優れた実燃費を支える技術として、スズキが新型ワゴンRで力を入れたのが、新アイドリングストップであり、エコクールであり、エネチャージという、三つの省エネ技術だ。 新アイドリングストップは、13km/hまで速度が下がった段階で、エンジンを止めてしまうアイドリングストップ機構である。車が止まる前にエンジンをストップするから、その分、燃費が向上する。 エコクールは、アイドリングストップした状態でも、エアコンディショナーの効きを長持ちさせる機能で、従来のおよそ2倍となる60秒間、冷風を出し続けられる工夫が織り込まれた。空調の風が吹き出す手前部分に、冷凍食品の保管などに使われる保冷剤を用いることで、アイドリングストップでエアコンディショナーが停止しても、冷気を継続的に送風できるようにした。これまでは送風温度が上がると、停車中でもエンジンを再始動しエアコンディショナーを起動させていたが、新機能により室内の快適さを保持したまま、アイドリングストップ時間を延長できるようになった。 実際、夏の暑さが残る日に試乗したとき、交差点で60秒を超えて信号待ちをしたが、エアコンディショナーは冷風を出し続け、アイドリングストップも継続された。 次に、クルマが電気系統で必要とする電力を、減速するときに集中して発電し、それを大容量のリチウムイオンバッテリーに蓄えておくというのが、エネチャージである。クルマで使う電力は、これまではエンジンの力を一部利用して発電機を回し、12ボルトの鉛バッテリーに蓄えてきた。それに対してエネチャージは、発電機を回すのをクルマが減速してエンジンが燃料を使わないときだけに限定した。それを、大容量のリチウムイオンバッテリーに 静かで上質な乗り心地こうした省エネ機構を搭載した新型ワゴンRに試乗して、もっとも印象深かったのは、高級感を漂わせる上質な乗り心地だった。これで軽自動車なの?と思わせるほど、静かで、振動が少なく、滑らかに走るのである。これならば、軽自動車に乗ったことがない人でも、ダウンサイジングの候補として軽自動車を選択肢に入れられると思った。 とくにこの上質さが感じられたのは、自然吸気エンジン車(2WD)の方で、ターボエンジン車に比べ最高出力は52馬力と小さいが、加速に不満を覚えることもなかった。とにかく、走らせていることが気持ちいい新型ワゴンRである。 自然吸気エンジン車の動力性能で大いに満足できた要因の一つは、徹底された軽量化だ。前型ワゴンRに比べ、同じ車種の「FXリミテッド」で70キロも軽くなっている。この軽量化が加速の向上にはもちろん、燃費向上にも効果をあげている。そして軽いから、クルマの走りも軽快で、カーブも爽快に駆け抜けてくれるのだ。 もともとワゴンRは、初代からワゴンとしての使い勝手の良さだけでなく、運転席の座り方がドライバーの心をときめかせた。そこに、爽快な走り味と、上質な乗り心地が加わって、新型ワゴンRにはすっかり 軽自動車の燃費性能が30km/Lを超えた昨年あたりから、軽自動車の価値が大きく跳ね上がってきたと感じる。そこに登場した新型ワゴンRは、軽ワゴンでナンバーワンという低燃費だけでなく、快適性や走りの面でも飛躍を見せた。軽自動車だから、あるいは、黄色いナンバーだからと、侮れない時代がやってきたことを、新型ワゴンRは実感させる仕上がりである。
(2012年10月16日 読売新聞)
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