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プロ野球改革 選手の希望かなうドラフトに(10月27日付・読売社説)

 プロ野球ドラフト(新人選手選択)会議は、今年も様々なドラマを生んだ。12球団に指名された選手たちが、プロ野球を背負って立つ存在に成長することを願いたい。

 巨人入りを望んでいた東海大の菅野智之投手は、念願がかなった。昨年、日本ハムの1位指名を拒否し、浪人生活を送った。「心が折れそうな時もあったが、すべて報われた気がします」。喜びの言葉には実感がこもっていた。

 伸び盛りの時期に実戦から遠ざかった影響は、決して小さくないだろう。そのハンデを乗り越え、ファンの期待に応える投球を見せてもらいたい。

 菅野投手のケースは希望球団に入りたくても入れないドラフト制度の問題点を浮き彫りにした。

 ドラフトの目玉と言われた花巻東高(岩手)の大谷翔平投手は、日本ハムの1位指名を受けた。米大リーグへの挑戦を事前に表明したが、日本ハムは「その年の一番いい選手を」という方針の下、指名に踏み切った。

 才能豊かな若者が海外でチャレンジするのは、素晴らしいことだ。大谷投手の世代は、イチロー選手らが大リーグで活躍する姿を少年期に見て育った。「自分もあの舞台で」との思いを抱くのは、自然なことなのかもしれない。

 大リーグで日本選手の評価が高まり、米球団も日本を有望な新人の発掘先として重視している。

 だが、優れた選手の海外流出が続けば、日本のプロ野球の地盤沈下は避けられまい。

 ドラフト候補選手の獲得に関し、日米球界間には互いに獲得を自粛する紳士協定しかなく、明文化されたルールは存在しない。

 米球団は獲得したい日本選手と自由に交渉が可能だ。ドラフトで交渉権を獲得しない限り選手と折衝できない国内球団よりも、有利な立場にある。日米の球団が対等な条件で獲得を競えるルールが必要な時代になったと言える。

 大谷投手は今後、日本ハムに指名されたことに拘束されず、複数の米球団との交渉を進められる。自分の意思で球団を選ぶことができるわけだ。

 これに対し、国内のドラフト制度は、選手が球団を選択できる仕組みにはなっていない。

 有望選手が国内でプレーしたいと思うように、プロ野球をより魅力的なものにしなければならない。それと並行して、選手の希望が、ある程度は反映される制度へと改善していくことが求められているのではないだろうか。

2012年10月27日01時29分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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