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ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収はユーザーの利益になるか

 ソフトバンクは、10月15日にアメリカ携帯電話業界3位のスプリント・ネクステルを約1兆5千億円で買収すると発表した。

 ソフトバンクモバイルに、傘下の PHS 事業者「ウィルコム」、10月1日に子会社化を発表したばかりの「イー・アクセス」、そして今回買収したスプリント・ネクステルを合わせると、連結売上高で世界3位となる巨大通信グループが誕生するのだ。

 ただ発表直後から、今回の買収に対しては疑問の声が数多く挙がっている。巨額の投資をすることに対して、現在のソフトバンクモバイルユーザーに対する明確なメリットが、まだ見えてこないのだ。

●買収のメリット、47.1%が「わからない」と回答

 弊誌編集部が調査会社を通じてソフトバンクモバイルのユーザー1,000名に対して行った緊急アンケートによると、今回の買収に対するメリットについて「わからない」と回答した人は47.1%と半数近くにのぼる。また、「メリットがあると思う」と回答した人は30.8%となったが、買収によって期待していることを聞いた質問に対しては、「利用料金が安くなること」(44.8%)、「電波状態が良くなること」(33.8%)、「端末料金が安くなること」(29.7%)などが上位に挙がっており、これらは買収前からソフトバンクに対して抱いているニーズと大きな相違がなく、ソフトバンクとスプリント・ネクステルによる相乗効果を期待する声は見えてこない。


今回の買収のメリットについて「わからない」という意見が多い

 

 一方で、今回の買収に対してソフトバンクユーザーが抱いている不安に目を向けると、その内容は深刻だ。最も多かった回答が、「買収によるメリットが利用者に届かないこと」(28.6%)と「ソフトバンクモバイルの経営が圧迫されること」(28.6%)。以下、「利用料金が高くなること」(26.0%)、「複雑なサービスが増えること」(18.5%)、「端末料金が高くなること」(14.7%)が続く。自由回答では「スプリント・ネクステルが何の会社かわからない」「債務を抱えて大丈夫か心配」といった声もある。


今回の買収に対して不安に思うことは?

 

 これらの声を総合すると、多くのソフトバンクユーザーは今回の買収について「直接的なメリットを感じない」という認識が強く、それだけでなく巨額の投資が経営を圧迫することにより、そのしわ寄せが通信料金や端末料金に乗せられるのではないかと不安に感じているのではないかと推測できる。

 確かに、ソフトバンクモバイルは現在プラチナバンドのエリア整備、Softbank 4G/4G LTE のエリア整備に大きな設備投資を進めているほか、イー・アクセスの買収も発表したばかりだ。そこにきて今回の約1兆5千億円という巨額の海外投資。他社に比べて料金の安さを評価して使っているソフトバンクのユーザーも、その安さがこの先維持できるのかという疑問を持ちたくなるのは当たり前だろう。また、日本の通信業界とは関係のないスプリント・ネクステルという海外事業者の買収コストが日本のユーザーに跳ね返ってくるのであれば、ユーザーからの反発は避けられない。

 また一方で、スプリント・ネクステルの買収を急ぐよりも前に、現在進めている日本国内の通信品質向上に更なる投資をするべきではなかったのかという疑問もある。もしも現在のユーザーが感じている通信品質への不満が大きく改善されるようなストーリーが見えていれば、ユーザーは今回の買収を歓迎するはずなのだが、現時点でソフトバンクとスプリント・ネクステルが手を組んだことによる具体的な通信サービスの面でのメリットは見えてきていない。日本のユーザーにとって、現在ソフトバンクが急ぐべきは海外事業への投資ではなく、通信品質やサービスの拡充による国内ユーザーの満足度向上なのではないだろうか。

●電撃的ともいえる買収劇、識者はどう見る?

 では、今回の買収劇について、識者はどのように見ているのか。経済ジャーナリストの町田徹氏にお話に伺った。買収については、「(ソフトバンクにとっては)財務的にもビジネスの風土の違いからも"いばらの道"かもしれないが、グローバル企業を目指すという姿勢は応援したい」と今回の買収に一定の評価を示した。一方で、「ソフトバンクがボーダフォンを買収したときの環境と比べると、現在のソフトバンクには今まさに始まった LTE に対する設備投資を早急に進める必要がある」と、国内向け施策と買収による成長戦略の両立が課題になると指摘した。

 また、今回の買収によるメリットについては、「端末や OS はメーカーとの協議で通信会社のネットワーク環境に最適なカスタマイズがなされるべきだが、日本の通信会社は日本市場でのスケールメリットが評価されないが故に、この点で世界の端末メーカーや OS ベンダーと対等に協業できなかった。しかし、今回の買収によりスケールメリットが出れば、ソフトバンクのネットワーク環境に最適化された端末を提供する環境は整備できるのではないか」とした一方で、「今回の買収の直後からユーザーメリットが出るとは考えにくい。売上高では世界3位だが、契約者規模では世界ベスト10にも入っていないので、グローバルスケールメリットを出すためには今後もチャレンジを続ける必要がある」とした。

 そして、巨額の投資が契約者の利用料金に影響を与えるのではないかという質問に対しては、「可能性は否定できない。しかしソフトバンクは、通信品質は劣るが価格は安いという点が評価されて契約者を伸ばしてきた。この価格優位性が崩れたら自分たちの首を締めることになるという意識は持っているはずだ。契約者に投資コストを転嫁しない努力はするのではないか」と見解を述べた。

 町田氏の見解からも、今回の買収が、中長期的に見た場合のソフトバンクの成長に繋がるのではないかという期待感は持てるが、短期的には現在のユーザーに直接的なメリットはないようである。アンケートに戻ると、ユーザーからは「ソフトバンクに対して要望すること」の上位には「利用料金をもっと安くしてほしい」(55.6%)、「長期利用ユーザーを優遇してほしい」(53.3%)、「電波状態を改善してほしい」(52.0%)といった意見が挙がっており、国内のユーザー満足度を見据えた対応も急務だ。短期的な国内ユーザーの満足度向上施策とグローバル規模での中長期的な成長戦略、この二つを今後どのように形にしていこうとしているのか。ソフトバンクの今後の動向に注目したい。(インターネットコム)


ソフトバンクユーザーの要望は?

 

2012年10月28日  読売新聞)
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