父の演説中、後方ドアからそっと入った世襲候補
「私の後継者は中川俊直になりました。ふるさとのため、皆さんのお力で育ててやっていただきたい」
衆院広島4区の大票田、広島県東広島市の公民館で18日、今期限りで衆院議員を引退した自民党元幹事長の中川秀直氏が、地盤を引き継ぐ次男の俊直氏を支持者らに紹介した。42歳。父の議員秘書を務めた。
そのさなか、俊直氏は後方ドアから静かに入室し、後列のイスにそっと座る。父子が壇上で並ぶことはない。「2ショット」を撮影され、世襲批判を招くことを防ぐ選挙戦略だ。父の退室後、ようやく俊直氏がマイクを握る。「中川秀直に賜りましたご厚情をつなげていただきたい」
政権奪還に向けて勢いづく自民党。足元で、3年前に有権者からノーを突きつけられた「古い体質」が頭をもたげる。
福田元首相の長男、武部勤・元幹事長の長男……。党大物の息子たちが今回の選挙に挑む。2009年衆院選で自民党は、党改革をアピールするため、3親等以内を後継にしない世襲制限を定めた公約を掲げていた。党内の反対を押し切って公約明記を訴えたのが、秀直氏だった。
「公平な公募でそうなったと理解してもらうしかない」と、次男への世襲について話す。
党県連が先月実施した公募では4人が応募したが、2次選考に進めたのは俊直氏のみ。「出来レース」との声が地元の党関係者からも上がる。出馬を予定する他の世襲候補も多くは「公募」で決まっている。
俊直氏は、こう語る。
「批判は謙虚に受け止め、政策や情熱を示していくしかない。(世襲は)私の重い十字架。消しゴムでは消せない事実だ」
(2012年11月20日11時18分 読売新聞)
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