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グローバル化維新

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第22回 掲示板やツィッターはグローバル化の大前提

被災地支援で大きな役割を果たしたグーグルの震災情報ポータルサイト

 「拡散希望。また原発から煙……今緊急に助けが必要なのは原発周辺の人達。とにかくガソリンと食べ物を」

 今年3月、警戒区域に指定され、交通手段を奪われた福島沿岸部の町から救いを求める悲痛な「つぶやき」が世界に発信された。

 混乱と余震の続く中、被災者はツイッターやフェイスブックのようなSNSツールを使い、自らの状況を発信し、グーグルなどが立ち上げた震災情報サイトで家族の安否を確認した。従来メディアが機能不全に陥る中、新しいコミュニケーション・ツールはその意外な実力を見せつけた。

 「SNSは震災時も使える」

 こう考えたのは被災者ばかりでない。企業も同じだ。計画停電で通常業務の遂行が難しくなった首都圏のオフィスでもコミュニケーション・ツールが事業の継続に寄与した。中でも注目を集めたのが日本アイ・ビー・エムの例だ。

震災で自宅待機でも使えるインフラ

公衆電話に並ぶ多くの帰宅困難者ら(3月11日夜、JR渋谷駅前で)=杉本昌大撮影

 震災からしばらくの間、首都圏の交通は電力不足などでマヒした。多くのビジネスマンが通勤の足を奪われ、社員に自宅待機を命じる会社も少なくなかった。これは日本アイ・ビー・エムも同様だ。

 ただ、自宅待機といわれても仕事用パソコンもなければ、業務システムもサーバーもない。自宅に仕事をする環境などない。待機といいながら、白煙を上げる原発上空を飛ぶ自衛隊のヘリコプターをテレビで見ながら「休暇」を取っていた人の方が多いはずだ。

 だが、日本アイ・ビー・エムの場合、ノートパソコンがあれば自宅でも仕事ができるインフラや、その運用ルールが整備されていた。

 社内のイントラネットの掲示板には社長のメッセージ、社員の安否、幕張のデータセンターや東北地方の拠点の状況、顧客に対してどのような支援を始めたかといった会社の最新情報が刻一刻と掲載された。待機中の社員も自宅で会社の状況をリアルタイムで知ることができたという。

 掲示板以外にもテレビ会議システムや、フェイスブック、ツイッターのような社内用SNSツールが積極的に活用された。

 同社は震災から1時間で被災地を含む全拠点の状況をほぼ把握し、翌日には救援物資の補給体制を確保。被災した顧客への対応を始めることができたが、この震災対応を陰で支えていたのが数々のコミュニケーション・ツールだった。

 同じ場所に社員が居なくても互いにコミュニケーションが取れ、価値観と目標を共有しながら仕事を進めることができる。もちろん震災対策のための仕組みではない。これは、世界規模で業務を効率よく進めるためのシステムであり、インフラなのだ。

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