【書評】迷走する日本外交の新指針 中国とイランが大攻勢 (1/2ページ)

2012.12.9 06:30

 ■『動乱のインテリジェンス』

 北方四島、竹島、尖閣諸島。乱気流が流れ込む日本列島周辺海域の波は高い。福島第1原発事故後、国力の陰りに乗じて周辺国が攻勢に転じ、国境線が縮みはじめている。本書は日本を代表する外交専門家の2人がインテリジェンスをプリズムに日本の「危機」を読み解き、処方箋を提言する良質で刺激的な対談である。

 たとえば尖閣問題は、手嶋龍一氏が国際社会に「日本固有の領土」とアピールしてこなかった外務官僚の不作為が外交的危機を招いたと分析すれば、「尖閣沖海戦の危険性が現実のものとなりつつある」と指摘する佐藤優(まさる)氏は、国際社会において領土問題が存在すると認知されるようになった中国外交の勝利と洞察する。

 その上で、中国の引力が働く沖縄について佐藤氏は、「亜民族意識」に注目し、海洋資源の宝庫でもある沖縄が独立性を強め、中国とガス田共同開発を始めれば、ソ連崩壊後、永世中立国となったトルクメニスタンのようになる可能性もあると語り、尖閣問題における沖縄の重要性を力説する。

 縮みゆく日本の背景には、黄昏(たそがれ)ゆく日米同盟がある。そこでは、中国とイランがインテリジェンスで日本に大攻勢をかけているという。

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