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『テレビ屋独白』 関口宏さん

家族で楽しめる番組を

 1960年代にテレビ界に飛び込み、「クイズ100人に聞きました」「わくわく動物ランド」「関口宏の東京フレンドパーク」など、数々のヒット番組で司会を務めてきた。

 約半世紀にわたり関わってきたテレビへの思いをまとめた。

 意外なようだが、これが初めての著書。きっかけは、長年共に仕事をしてきた友人がよこした引退のあいさつ状だ。番組の質の低下を心配する文面を見て、「どの番組も刺激的な内容ばかり追い求め、人に冷たくなっているのではないか。自分の中にたまっていた思いも同じ。それを書いておこう」と思った。

 草創期には「電気紙芝居」とさげすまれたテレビ。試行錯誤を繰り返しながら成長する過程を、自身の経験にも照らしてつづっていく。録画技術もなかった60年代、ドラマも生中継だった。実際あった笑うに笑えない失敗のエピソードを紹介しながら、その特徴は「『生』の何たるかを追求することにある」と、緊張の現場で培った信念ものぞかせる。「寝ても覚めても『視聴率』」と認めながらも、数字至上主義に縛られない良質な番組を生み出すため、放送局の組織論にまで言及する。

 〈「本音」と「露悪」は根本的に別のもの〉〈テレビ屋の最強かつ最大の敵は…自らを守ろうとする恐怖心〉――。控えめな文章に、本質を見据える鋭い言葉が並ぶ。テレビの未来像を追求する姿勢は衰えていない。69歳の今も現役バリバリなのだ。

 「テレビがお茶の間にあった時代の、家族みんなで楽しめる番組を作りたい。まだ力をもっているはず」。確信を持って語る姿勢は、やはり「テレビ屋」だった。(文芸春秋、1000円)(浅川貴道)

◆次回は『カーボン・アスリート』(白水社、1600円)の著者、山中俊治さん

2012年8月28日  読売新聞)

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