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【北のミサイル発射】平和脅かす暴挙に怒り(12月13日)

 北朝鮮が、事実上の長距離弾道ミサイルを12日に発射した。国連安全保障理事会決議を無視した暴挙に強い怒りを覚える。いつまで同様の騒ぎを繰り返すのか。もどかしさが募る。制裁強化を含めて国際社会がまとまって対応し、平和を脅かす動きを封じる方策を探ってほしい。
 北朝鮮のミサイル発射は、失敗に終わった4月以来となった。3段式で、「人工衛星打ち上げ」を名目にする。国際機関に事前通告するなどの手続きを踏み、宇宙開発に関する平和目的の実験-との立場を主張している。とはいえ、安保理決議は「あらゆる弾道ミサイル技術を利用した発射実験」を禁じている。違反に当たるのは明白だ。
 心配された日本への落下物などはなかった。予告した経路通りに飛行し、搭載物を軌道に乗せたという。射程距離を伸ばすなど、技術の向上がうかがえる。周辺各国への脅威が増したのは疑いない。
 金正恩第一書記が威信を示すため、父親である故金正日総書記の一周忌となる17日を前に「成果」を求めた-とされる。改革の兆しが一部で出ていたものの、「脅し」による外交が依然変わっていない証しだ。新たな核実験に踏み切る懸念も指摘される。
 これまでの決議や対応では北朝鮮の暴走を阻止できないことが明らかになった。政府は厳重に抗議するとともに、米韓両国と連携して厳しい対抗措置を目指す。
 北朝鮮に大きな影響力を持つ中国は「決議違反」との認識を示唆しているものの、制裁強化には慎重な姿勢だ。足並みがそろわなければ効果は上がらない。中韓両国との関係が悪化している中、道は険しそうだ。まずは、東アジアの安定が各国にとって繁栄の前提であることを粘り強く訴えていくしかあるまい。
 政府や自衛隊は不意打ちを食らった形となった。北朝鮮は「技術的欠陥が見つかった」として発射期間の延長を10日に発表した。11日には発射台からミサイルを撤去した-との情報もあった。警戒態勢が続いていたとはいえ、「発射は遠のいた」との観測が流れていた。北朝鮮がトラブルを偽装していた可能性もあるとされる。印象をより強烈にする狙いだろうか。
 発射は緊急情報ネットワークシステム「エムネット」や全国瞬時警報システム(Jアラート)を使って自治体や報道機関に速報された。ただ、棚倉町など一部で伝わらない事態が起きた。今回に限らず緊急時に漏れがあってはならない。点検や態勢強化を一層進めるべきだ。(鈴木 久)

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