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【復興への公約】もっと親身に、具体的に(12月11日)

 第46回衆院選は16日の投票日まであと5日。連日の寒波の中、12政党が入り乱れて終盤戦に突入している。県内の小選挙区でも激しいつばぜり合いが続けられ、各陣営とも組織を総動員して浮動票の掘り起こしに全力を挙げている。
 選挙戦が最後まで盛り上がることは大いに結構だが、終盤を迎えて、どうしても気に掛かることがある。本県にとって最大の関心事である東日本大震災・東京電力福島第一原発事故からの復旧・復興策が論戦の中心になっていないことだ。
 公示前、争点として話題に上ったのは「消費税増税」「原発政策」「環太平洋連携協定(TPP)交渉」「憲法問題」だった。以前から復旧・復興策が外れているようで不安だった。しかし、各党が発表した公約には「大震災・原発事故からの復興」がしっかり入っていた。中でも民主党は「東日本からの復興が最重点」、自民党が「まず、復興。ふるさとを、取り戻す」と一番手に掲げられた。忘れられていなかった-と胸をなで下ろした。
 ところが各党首・代表の持つマイクからは「除染の徹底」「賠償のスピード化」「雇用の創出」「被災者支援」などの言葉は躍るものの、具体的な政策が抜けている。
 残念ながら県内の候補者にも同様な傾向が見られる。「徹底した除染」「被災者の生活再建」「震災前の本県を取り戻す」などを公約にしているが、言葉だけのアドバルーンで終わっているように感じてならない。
 誰が、いつまで、どこを除染するのか。復旧のネックになっている中間貯蔵施設や仮置き場は国や県、関係市町村に委ねるだけでいいのか。避難者の帰還をどう進めるのか。風評被害防止の手段は何か…。聞こえの良い公約はこりごりだが、具体的にイメージできない公約の羅列も困る。
 大震災・原発事故からちょうど1年9カ月。発生当時、次から次へと国会議員が視察に訪れていたが、今では政府の要職を務める議員を除いて、ほとんど姿が見えなくなった。「復旧・復興が第一」と言いながら国会議員一人一人がどれだけ国政に被災者の声を反映させ、取り組んでくれたのかが分からないのが実態だ。
 今回の衆院選は、やっと巡ってきたチャンスだ。有権者として政治に大きな期待を寄せることができる当然の権利を実現させようではないか。本県の復興にささげる「本気度」をじっくり吟味し、1票を投じよう。(浜津 三千雄)

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