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あぶくま抄(12月15日)

 旧年中の礼を述べ、相手の幸多きことを祈る。変わらぬ交際も願う。年賀状の一般的な内容だ。年賀はがきの受け付けがきょう15日、始まる。県内の販売枚数は年々、減少傾向にあるといえ、もらえばうれしい。
 新年のあいさつをメールで送る人が最近は若者を中心に増えている。携帯電話には、「テンプレート」と呼ばれるひな型もたくさん入っている。メッセージを書き込むだけで済む。一方、日本郵政も負けてはいない。来年の干支[えと]「巳」にちなんだ年賀状のデザインをインターネットで1000種類以上、無料提供している。1枚でも多く投函[とうかん]してほしいとの狙いだ。
 「まだ出す気持ちになれない」。本紙ひろば欄に掲載された田村市の70代の男性の声だ。石川県で避難生活を送る。生活自体は落ち着いてきたが、原発事故は収束せず、心は晴れない。今年も年賀状を買わない。代わりに年末のあいさつ状を出すことにした。原発事故の記憶を風化させないよう避難先での自分の思いをしたためる。
 震災と原発事故を、「復興」という明るいニュースに変えていく。県民全ての願いだ。「旧年中の復興への支援に心から感謝します」。年賀状で伝えられたらいい。

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