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【復興と政権交代】今度は自民が試される(12月18日)

 国政のかじ取りが、衆院選で圧勝した自民党に移る。安倍晋三総裁が次の首相に就任確実だ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復旧復興にも大きな責務を負う。これまでは野党として、民主党政権の取り組みの遅さや予算「流用」を厳しく批判してきた。課題は依然、山積している。今度は自らの手腕が試される。迅速で、効果の見える施策が求められる。
 安倍総裁は公示初日に福島など県内3市で「福島の復興なくして日本の未来はない」と第一声を上げた。復興の現状を「進んでいない。民主の間違った政治主導」と批判し「原発の被害回復は東京電力に任せるのではなく、国が責任を持つ」とも約束した。
 政権公約の冊子にも「まず、復興」を巻頭に掲げ、復興庁の本格稼働、がれき処理の推進、交付金の柔軟な運用、中小企業の資金繰り対策強化-などを示した。ただ、原発事故に伴う問題の解決策への記述はわずかだ。
 選挙結果を受けた17日の総裁会見でも、経済政策や教育再生、憲法問題などが話の多くを占め、被災地への言及は少なかった。
 自民県連は、独自に「県版の政策集」を先月発表している。県内の原発10基全ての廃炉実現をはじめ、徹底した除染や安全な中間貯蔵施設の早期設置などを柱にする。廃炉実現は、党の政権公約に掲げた「今後3年で原発再稼働の可否を決める」とは、姿勢がやや異なる。安倍総裁が県連の考えをどう受け止め、判断するかを聞きたい。
 県民が今一番知りたいのは中間貯蔵施設や賠償、健康管理についての具体的な内容や工程だろう。また、政府が打ち出してきた方針や基準が変えられる可能性はないのか。不安を取り除くため、新政権としての覚悟や目標を明示してほしい。
 衆院選では、本県で自民候補5人全員が比例復活も含めて議席を獲得した。浜通り南部を基盤にする1人が比例中国で当選した。地元に精通する代表として、県内の声を全国に届け、まとまって動けば、大きな力になるはずだ。
 このほか民主の2人と日本維新の会の1人が議席を得た。県土再生は党派を超えた課題といえる。各議員が経験や知識を生かして政府に協力したり、時には注文を付けたりすべきだ。
 安倍総裁は会見で、来年夏の参院選での勝利に向けた体制づくりも挙げた。復興が引き続き大きな争点となろう。着実な成果を挙げられなければ、民主と同じ道をたどりかねない。(鈴木 久)

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