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こたつ 気楽な“いろりムード”

昭和47年(1972年)1月28日 朝刊


冬のおしゃべりには絶好です

 
からだによい頭寒足熱

 ふつうの家庭からは火ばちが姿を消し、石油、ガスストーブや最近ではパネル・ヒーターなど、暖房具にはいろいろな変遷はあるが、そのなかで相変わらず愛用されているこたつ。電気代は1時間あたり1円強から2円どまりというから、1日5時間使って電気代は10円とかからない。また、石油ストーブなどに比べ扱いも簡単だし、比較的安全。局部暖房とはいうが、頭寒足熱式に全身の血行をよくするといった効果はある。が、愛用されている理由はそれだけだろうか。

 マナー評論家・酒井美意子さんがあげるこたつの利用価値は、そのまま、かつてはいろり(囲炉裏)が果たしていたと考えてよかろう。ずっとむかし、一つの場所が家のすべてであった、たて穴式住居の跡にも、地面を少しくぼめた炉があった。炉は暖房、照明、炊事の3役を兼ねていた。いろりは、家族全員が集合する場所であり、食堂であり、そしてお客さんの接待場でもあった。その後、照明としてのあかりが独立し、煮たきをする場としてのカマドができ、暖房も部屋がふえるとともに、火を小さく分けて火おけ、火ばちへと変化していった。家の中の部屋が分かれ、火が移動、分散するようになって、家族はしだいにいろりから離れ、独立した生活の場を持つようになった。

 そして現代、部屋どころか家族の生活時間まで分化して、朝食が3回あるといった家庭も珍しくはなくなった。そのため、家族の対話も少なくなり、子供が大きくなった家庭では、家族というより同居人といった嘆きも聞く。個人の自由は尊重されるが、反面、家族の連帯は薄れてきた。その意味でも、家族が顔を見合わすこたつの存在価値は見なおされていいだろう。それは一家だんらんの場としてのいろりへの郷愁でもあり、断絶のかけ橋としてかえって愛用されているのかもしれない。(連載「見なおす」より 記事を一部抜粋)


 

2012年12月11日  読売新聞)

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