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あぶくま抄(12月19日)

 そばのような色合いで、食べるとほのかな甘味が口の中に広がる。「彩絆[さいき]うどん」だ。いわき市のリプロ内郷企業組合が開発した。薬膳料理で地域おこしに取り組む。新たな名物で復興の後押しを-との思いがこもる。

 地元内郷産の黒米、赤米、緑米などの古代米や、うるち米、もち米などの玄米39種類を小麦粉に練り込む。3カ月かけ、十数回にわたる試作を重ねた末に完成させた。先月開いた試食会は、市民の列ができた。市内の飲食店から注文も入り始めている。年明けから本格的に製造、販売するという。

 市内四倉町の被災事業者が麺作りに協力した。製麺機器が震災の津波で全て壊れた。修理を頼んでも、原発事故の影響で業者は来ない。家族の手で直し、3週間後に操業を再開した。ただ、風評被害で首都圏からの受注は落ち込んだままだ。市内の取引先との結び付きが経営を支える。彩絆うどんに感謝の気持ちも込める。

 新年には、味の彩りも増す。組合と製麺業者は共同で、そうめんとパスタ作りに乗り出す。どの小麦粉が最適か、米粉の割合は…。試行錯誤の日々が再び始まる。共に震災からの再起を目指す。「絆」が一番のつなぎになる。

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