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【双葉町長不信任】 混乱は復興の妨げだ(12月21日)

 双葉町の井戸川克隆町長に対する不信任決議案が20日の12月定例町議会で可決された。井戸川町長は議会を解散するか辞職を迫られる。解散しなければ失職する。東京電力福島第一原発の所在地であり、全住民が町外に避難する。町政運営の両輪とされる町長と議会が決別する事態は不幸としか言いようがない。町を挙げて復興へ向かう態勢を早急に取り戻してほしい。
 不信任決議案は6、9月の両定例議会にも提出されたが、いずれも否決された。今回は過去に反対した議員も賛成に回り、全会一致で可決した。決議は「町長は自分の町、自分の考えだけで事に当たろうとした」とする。全議員が一致して今月12日に出した辞職要求を拒否されたことも、3度目の決議案提出につながった。
 両者が歩み寄る余地はあったはずだ。井戸川町長は6月の否決後「重く受け止める」、9月には「議会とよく意思の疎通を図っていきたい」と話した。今回の結果は、この半年、説明や意思疎通が円滑にいかなかったことを示す。
 「十分な説明を受けていない」「一生懸命町民のために頑張っている」。井戸川町長は国、県、東電などへの不満や自らの奮闘を口にする。ならば、町議会へ説明し、理解と協力を得る努力をとことん重ねてほしかった。
 県、双葉郡の他町村とのぎくしゃくした関係も町議会の危機感を募らせたに違いない。井戸川町長は10日、双葉地方町村会長を辞任した。11月の県、郡内町村長との会議を欠席し、他の町村長から辞任を求められたためだ。
 井戸川町長は中間貯蔵施設をめぐり、現地調査受け入れを認めた県を批判する。会議に出席して見解を示すべきだったのではないか。自治体間で復興への考え方に温度差があるのはやむを得ない。相互理解を図り、調整しながら進めていくのが政治の役割だ。
 町は、全域が警戒区域の町内を今年度内に再編する見通しだ。損害賠償に影響し、町民の関心は高い。いわき市東田町に埼玉県加須市から移す町役場機能本体は年内着工、今年度内の移転を目指す。町外コミュニティー(仮の町)整備を望む声もあり、いわき市との調整は待ったなしだ。
 町議会解散に伴う町議選、辞職を受けた町長選のどちらになるにせよ、町政に空白が生じるのは確かだ。町長と議会は緊張感を保ちつつ意思の通う関係が望まれる。いがみ合いで損をするのは町民だ。長引く混乱で、復興の速度が鈍るようなことがあってはならない。(鞍田 炎)

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