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【自民政権奪還】謙虚さが肝要だ(12月17日)

 第46回衆院選は自民党が圧勝し、政権を奪い返した。公明党と連立政権をつくる。平成21年8月の前回衆院選で誕生した民主党政権は「退場処分」となった。諸課題に適切に対応できず、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故からの復興にもスピード感を欠いた。刷新を願う有権者の意思が主役を交代させたと言えよう。
 「自民に対する信頼が100パーセント戻った訳ではない」。自民の安倍晋三総裁は厳しい表情で述べた。政権運営に未熟な民主の「敵失」に助けられた勝利だったことを認めた形だ。前回は体調不良から首相を辞任、続く首相も次々替わり、信頼を失った。有権者の消極的支持が再登板を可能にした。数の力におごることなく謙虚な姿勢を求めたい。
 政権交代が懸かった選挙だったにもかかわらず、投票率が前回より下がったのは残念だ。勢力拡大を図る第三極の台頭で候補者が乱立した。選択肢が増えた半面、政策の違いはかえって見えにくくなった。政党の存在意義が問い直される戦いでもあった。
 多くの難題が待ち受ける。原子力政策は、運転停止中の原発を再稼働させるのか、再生可能エネルギーを含む電源構成をどうする-国民の視線は厳しい。電力の安定供給と安全確保は政府の責任だ。判断の先送りは許されない。
 社会保障改革は民主、公明と新制度づくりで合意したが、自分の責任で生活する「自助」を重んじる自民、政府や自治体ができるだけ支える「公助」「共助」を大事にする民主は考え方が違う。国民生活に直結するだけに、早急な議論開始を望む。
 自民は大規模な公共投資を経済対策に掲げた。不況克服に期待がある一方、財政赤字をさらに増やすとの懸念が出ている。財政再建の道筋を示す必要がある。野放図な財政支出は許されない。
 ただ、本県など被災地の復興予算は今後も十分確保しなければならない。産業基盤整備、雇用創出により経済は息を吹き返しつつある。今、支援の手を緩めれば、地域再生の芽はしぼんでしまう。
 民主は野田佳彦首相が大敗北の責任を取って代表を退く。来年夏の参院選をにらんだ立て直しが課題となる。
 大勝したとはいえ、自民は公明と合わせても参院で過半数に満たない。他党との関係づくりが鍵を握る。「政策ごとに他党の理解を得ていく」と安倍総裁は強調する。「ねじれ国会」の下、政治をどう前に進めるか。政策協議をおろそかにした「野合」は許されない。(鞍田 炎)

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