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もっと思い聞いて 安倍首相来県 駆け足視察に不満も 訴え伝え切れず

 29日来県した安倍晋三首相は、駆け足で復興への取り組みを視察した。川内村では約50分で4カ所を巡る過密日程で、要望の機会を期待して出迎えた仮設住宅の村民は「あまりにもあっという間。被災地の現状を分かってもらえたのか」と首をかしげた。川内村民が避難する郡山市の仮設住宅では懇談会が開かれ、住民が首相に直接、精神的損害賠償の継続などを訴えた。ただ、「もっと話を聞いてほしかったのに」と約35分間という時間の短さを残念がった。
 安倍首相が川内村下川内の仮設住宅集会施設「五社の杜サポートセンター」に到着したのは午後2時20分ごろ。仮設住宅に入居する約70人が出迎えた。
 安倍首相は車から降りると佐藤雄平知事、遠藤雄幸村長をはじめ集会所の外で待っていた仮設住宅の住民に「ごくろうさまです」と声を掛けながら一人一人と握手を交わし、約7分後に集会所を後にした。
 「来てくれただけありがたいが、住民の思いも聞いてもらいたかった」。仮設住宅の主婦関根トヨ子さん(62)は握手した後すぐに次の視察地に向かった安倍首相の姿に肩を落とした。下川内の自宅で農業をして生計を立てていたが警戒区域に指定され避難生活に。現在も線量が高く居住制限区域に指定されている。「線量を下げるには畑や森林の除染も必要。昔のように自宅で農業をしたい」と切実な声を上げた。
 安倍首相から声を掛けられたが、会話する機会がなかった無職志田勇さん(82)は「村の実情を理解し、避難している住民が一刻も早く、自宅に帰れるよう復興策を進めてほしい」と望んだ。
 安倍首相は、近くの菊池製作所川内工場を約15分間視察。村民の生活を支えているファミリーマート川内村店では、村民と一緒に5分間程度買い物をした後、野菜工場の試験栽培場で育成状況を見学し、午後3時すぎに村を離れた。
 村内を慌ただしく車で駆け抜けていった首相。村内の仮設住宅に避難している無職若松キクノさん(90)は「とにかく被災者がこれ以上、苦労しないように頑張ってほしい」と、首相の車を見送った。

■郡山の仮設住宅で意見交換
 郡山市富田町の仮設住宅には、安倍首相は予定より25分早い午後4時35分に到着。早速、仮設住宅集会所で川内村民21人と車座になって意見を交わした。
 「最初の出張の地は福島県に決めていた。早期帰還の支援を具体的に進める」。安倍首相のあいさつでスタートすると、予定通り約35分間で村民4人が賠償の充実、森林除染の実施などを求めた。60代の女性は精神的損害賠償の継続を要望したが、切り出そうと思っていた村周辺の道路環境整備についての話までは時間の都合で伝えられなかった。女性は「就任後すぐに足を運んでくれたのはありがたい。でも、もっと言いたいことがあった」と不満を漏らした。
 自宅が居住制限区域内にある主婦横田ツネ子さん(68)は自宅周辺の放射線量が現在も比較的高いことなどを訴えた。「同じ境遇の人はたくさんいるはず。他の町村の声も聞いてもらいたい」と注文。懇談会に参加した無職久保田渡さん(64)は「国が全面的に支援するとの言葉は心強かったが、村民に早い帰還を促すようにも聞こえた」と複雑そうに話した。

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