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【楢葉インター】帰還の玄関口整備急げ(12月22日)

 住民帰還へ準備が進む楢葉町で、常磐自動車道に楢葉インターチェンジ(IC)を設置する構想が動きだした。町は「復興枠」予算での整備を求め、国や東日本高速道路への要望も始めた。双葉郡の再生に向け、高速交通網の出入り口となる意義は大きい。
 東京電力福島第一原発事故の収束・廃炉に伴う研究機関の誘致や新産業の集積には、高速道の利便性が不可欠だ。万が一の事態に緊急避難道の役目も担う。帰還への安心感が広まろう。早くて平成27年度中とされる常磐道の全線開通に先んじて、国主導で早期の整備を求めたい。
 町の構想では、広野-常磐富岡IC(延長17キロ)間にできる楢葉パーキングエリア(PA)にインター設置を目指す。広野側から北に約6キロの地点だ。通常、PAに併設するスマートインターは自動料金収受システム(ETC)専用で、自治体の財政負担が前提となる。全住民が避難を続ける現状では、国が「復興インター」と位置付け支援しない限り、実現は難しい。
 開設の時期も重要になる。同区間は、富岡側が警戒区域のままで、いまだに再開できない。環境省は近く除染に入る。東日本高速道路は復旧工事を加速させ、25年度内の再開通を見込む。楢葉PAは9割方の造成工事を終えているが、供用は全線開通後とするのが現計画だ。町は26年春に役場機能を戻し、翌春に学校の再開を目指す。重要な局面を勘案し、広野側から暫定供用でも楢葉ICの前倒し整備を望む。
 設置する場合、町道につなぐか、県道いわき・浪江線に結ぶかで、費用や工期も変わる。町の構想を、県全体の復興戦略として実現する意味でも、国や県、町、東日本高速道路、地元の経済界などが一体となって推し進める態勢づくりを急ぐべきだ。
 従来のスマートインターはETC搭載車以外の車や大型・特殊車両が通れないなど制限が伴う。長期の復興需要を担う起点となるだけに、今までとは違う発想、機能も必要だ。どんな車も、いつでも利用できる環境が望まれる。費用と効果の尺度だけでなく、地域再興や帰還への先行投資という視点も欠かせない。
 北側の浪江-南相馬IC間(18キロ)は26年度内、最終区間の常磐富岡-浪江IC間(14キロ)は27年度内にも開通の見通しだ。双葉、大熊両町でも警戒区域解除や帰還時期に合わせ、近接の高速道から手軽に乗り降りできる工夫があってもいい。楢葉の開設で実を挙げ、呼び水としたい。(花見 政行)

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