論説・あぶくま抄

あぶくま抄

  • Check

あぶくま抄(1月1日)

 年が明け、干支[えと]が「辰[たつ]」から「巳[み]」に替わった。この時期は、日の出前に「へびつかい座」と「へび座」が東の空に現れる。ギリシャ神話の名医アスクレピオスが由来の星座だ。
 長寿と健康、医学の守護神とされ、死者をもよみがえらせたといわれる。治療の際はヘビを常に伴っていた。患部をなめさせ、病気を治したとの言い伝えが残る。1匹が巻き付いた「アスクレピオスの杖[つえ]」は医療、医術のシンボルとなった。世界保健機関(WHO)や米国医師会の紋章、軍医や衛生兵の兵科記章に用いられた。日本の救急車やドクターヘリにも描かれる。
 ヘビは洋の東西を問わず信仰の対象だ。日本でも豊穣[ほうじょう]、天候の神などとしてあがめられている。祭祀[さいし]や祀[まつ]りごとの「祀」に「巳」が用いられるのは、敬われていた表れだ。わずかな餌でも生き永らえるために、神の使いともされた。鏡餅は白ヘビがとぐろを巻いた形ともいう。
 「復興元年」のはずだった昨年が期待外れに終わり「新年こそ」との思いは強い。巳年の初めだ。神仏でも星座でもいい。医学や長寿にも通じているヘビに願[がん]を掛けてみてはどうだろう。脱皮を重ねる姿は「復活と再生」の象徴でもある。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧