各地に伝わる話を楽しんで
中脇初枝さん 38
女性が主人公の昔話を再話した作家
全国各地に伝えられてきた昔話を再話。北海道から鹿児島県奄美諸島までのお話に、歴史や背景などの解説を添えた『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』を、10月に偕成社から出しました。
本に収めた20話に共通するのは、女性が主人公であること。「子どもの頃から昔話が大好きだったのですが、女の子が主役の話が少ないなと感じてきました。昔話を調べるうちに、末っ子や嫁など弱い立場にいる女性が、自分で人生を切り開いていく話も結構あることがわかったんです」
徳島県生まれの高知県育ち。高知県立中村高校在学中に小説『魚のように』で坊っちゃん文学賞を受賞し、作家としてデビュー。筑波大学では民俗学について学び、創作と並行して全国の民話に触れてきたといいます。
「長年、語り継がれる中で残ってきた話というのは、やはり面白いものが多い。大人は昔話に道徳的な教えを求めがちですが、子どもは聞いて楽しいものに夢中になるもの。収録する話を選ぶ際は、まず面白さを重視しました」
地域の中で伝えられ、全国的にはあまり知られていない昔話を多く掲載。「わらしべ長者」「したきりすずめ」といった有名な話も、一般に知られているストーリーとは違う展開をするものを紹介しています。
再話にあたって気を配ったのは、音読した時に聞きやすい文章にすること。理解しやすいように、基本的に共通語で書きましたが、一部、方言を残しました。「実際に子どもたちに読み聞かせると、意味がよくわからない言葉があっても楽しんでくれました。その土地の言葉が持つ語呂の良さも、魅力の一つです」
はじめは幸が薄かったり、途中で怖い思いをしたりする主人公たちの多くは、幸せな結末を迎えます。
「子どもたちは、主人公に自分を重ねながら話を聞くものです。主人公の存在を肯定してくれる昔話に出会い、また次の世代に伝えていってもらえれば、うれしいですね」(郷)
(2012年11月20日 読売新聞)