『秘境駅へ行こう!』 牛山隆信著
好奇心と旅心くすぐる
地方支局にいた頃、民家も少ない山間部に、ポツンとローカル線の駅がある光景に何度か出くわしたことがある。
「なぜこんなところに駅が」と興味を持ったものだが、そんな好奇心を満たしてくれたのが本書だ。
著者は、利用者がほとんどなさそうな駅を「秘境駅」と呼んでインターネットで紹介している。掲載されているのはその
だがこうした秘境駅も、必要性があって造られたものだ。地元の要望で開設され、それを祝った記念碑が立っている駅もある。今では自動車の普及や過疎化で寂れてしまったが、読むほどに、秘境駅が鉄道開発の歴史を示す「遺産」であり、地元にとって大事な交通機関だったことが分かる。
本書が火付け役となって秘境駅を巡る人が増えているという。続編や写真集も出ている。駅の歴史や周辺の豊かな自然が、時間に追われる都会人には癒やしとなるのだろう。鉄道ファンはもちろん、そうでなくとも楽しめる一冊だ。(早)
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2001年、小学館文庫から書き下ろしで刊行。8刷6万5000部。476円。
(2012年11月28日 読売新聞)
- 『JAMJAM日記』 殿山泰司著 (1月16日)
- 『女ざかり』 丸谷才一著 (12月26日)
- 『野菊の墓』 伊藤左千夫著 (12月19日)
- 『陰の季節』 横山秀夫著 (12月12日)
- 『陰翳礼讃』 谷崎潤一郎著 (12月5日)
- 『秘境駅へ行こう!』 牛山隆信著 (11月28日)
- 『赤い高粱(こうりゃん)』 莫言(モーイエン)著 (11月21日)
- 『増補版 歌舞伎手帖』 渡辺保著 (11月14日)
- 『空中庭園』 角田光代著 (11月7日)
- 『科挙(かきょ)』 宮崎市定著 (10月31日)
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