現在位置は です

本文です

『秘境駅へ行こう!』 牛山隆信著

好奇心と旅心くすぐる

 地方支局にいた頃、民家も少ない山間部に、ポツンとローカル線の駅がある光景に何度か出くわしたことがある。

 「なぜこんなところに駅が」と興味を持ったものだが、そんな好奇心を満たしてくれたのが本書だ。

 著者は、利用者がほとんどなさそうな駅を「秘境駅」と呼んでインターネットで紹介している。掲載されているのはその()りすぐりだけに、トンネルに挟まれて外に通じるまともな道もない駅、断崖絶壁にはりつく駅など、ユニークなものばかりで、旅心をくすぐる。

 だがこうした秘境駅も、必要性があって造られたものだ。地元の要望で開設され、それを祝った記念碑が立っている駅もある。今では自動車の普及や過疎化で寂れてしまったが、読むほどに、秘境駅が鉄道開発の歴史を示す「遺産」であり、地元にとって大事な交通機関だったことが分かる。

 本書が火付け役となって秘境駅を巡る人が増えているという。続編や写真集も出ている。駅の歴史や周辺の豊かな自然が、時間に追われる都会人には癒やしとなるのだろう。鉄道ファンはもちろん、そうでなくとも楽しめる一冊だ。(早)

 2001年、小学館文庫から書き下ろしで刊行。8刷6万5000部。476円。

2012年11月28日  読売新聞)

 ピックアップ

トップ


現在位置は です


日本ファンタジーノベル大賞

連載・企画

巨匠も若手も幅広がる(11月28日)

第25回日本ファンタジーノベル大賞作品募集 小谷真理さん×小田雅久仁さん対談

第25回作品募集
小谷真理さん×小田雅久仁さん対談

読売文学賞

読売文学賞の人びと
第63回受賞者にインタビュー

リンク