「LOOPER/ルーパー」(米)…「未来の自分」との戦い
ルーパーとは、未来からタイムマシンで送られてくる人間を、暗殺する男たちのこと。
指定された時間に決められた場所で待ち、標的が現れると即座に撃ち殺す。だが、それが未来の自分だったら――。
腕利きのルーパーのジョー(ジョセフ・ゴードン・レヴィット=写真左)が、そんな状況に追い込まれ、年老いた自分(ブルース・ウィリス=同右)に逃げられる。その前に、友人が未来の自分に逃げられて組織に捕まるというエピソードがある。友人の姿を見せずに、未来から来た男の指がなくなり、腕がなくなり、そして――。現在の男が拷問されると、未来の同一人物の肉体が変わるのだ。なんと残酷なことだろう。
中年のジョーがやってきたのは、未来の暗黒街を支配する謎の男、レインメーカーを抹殺するため。だが、現在のジョーがそれを阻もうとする。若いジョーが捕まれば自分の命も危ないから、中年ジョーは若い自分から逃げながら、同時に彼を守らなくてはいけない。
一歩間違えば谷底に落ちる崖を歩くようにスリリング。いわゆるタイムトラベルもので、「ターミネーター」(1984年)や、「バタフライ・エフェクト」(2004年)などを思い起こすが、より、ひねりが利いている。
現在が変化すると未来が変わってしまうパラドックスが二重三重に積み重なり、知覚を刺激する。矛盾もあるのだが、新鋭ライアン・ジョンソン監督はそれを考える暇を与えない。ユニークで知的なSFアクションだ。1時間58分。有楽町・丸の内ルーブルなど。(編集委員 福永聖二)
(2013年1月11日 読売新聞)
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