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胎動ミャンマー

潜在市場 日中韓が狙う

車の販売フェアは、品定めに余念がない人々の熱気であふれていた(ヤンゴンで)=永田毅撮影

 ミャンマーの最大都市ヤンゴン中心部の大通り。右側通行の車道を席巻しているのは、右ハンドルの日本の中古車だ。

 「車に合わせて左側通行に切り替えてはどうか」

 そんな議論が真面目に交わされるほど日本車は、ミャンマー国民の間に浸透している。同国中央統計局によると、乗用車の保有台数は昨年末時点で約27万9000台で、95%は中古車が占めるとされる。ヤンゴンで今月7日に開かれた自動車販売フェアを訪れた30代の女性は、日本車が好まれる理由を「丈夫で長持ちするから」と解説した。

 アジア開発銀行は、ミャンマー経済の改革が順調に進めば、年7〜8%成長し、2030年までに中所得国になるとみている。1人あたりの国内総生産(GDP)は11年の推計で約832ドル(約6万5000円)だが、ヤンゴンでは約1700ドルに達するとの試算もある。

 一般的に、1人あたりのGDPが1000ドルを超えると、冷蔵庫などの白物家電の販売が拡大し、3000ドルを超えれば、自動車のような高額商品が売れるようになるとされる。

 自動車は11年9月以降の輸入規制の緩和で、価格が大幅に下がった。3年ほど前に、現行レートに換算して1億チャット(約900万円)以上で取引されていたトヨタ自動車の「マーク2」は現在2000万チャット(約180万円)ほどで買えるようになった。

 薄型テレビではソニーが、冷蔵庫、洗濯機などはパナソニックや日立製作所などの評価が高い。日立は、12年度中に駐在員事務所を設立し、ミャンマー市場を開拓する方針だ。

 ただ、日系企業も安閑としてはいられない状況だ。自動車販売フェアでは、韓国の起亜自動車のパンフレットが大量に配布されていた。街中でも中国の奇瑞汽車のタクシーが目につく。米調査会社フロスト&サリバンは「価格の安い韓国車と中国車が占有率を今後、高めていく」と分析する。

 ヤンゴンの電器街で韓国のLGエレクトロニクスの32型薄型テレビを購入した男性(46)は「LGの名前をよく聞くので選んだ」と話した。価格は約25万チャット(約2万2500円)と日本製品より約4割安い。

 韓国のサムスン電子を主に扱う量販店のタン・ウィン・アウン社長は「ミャンマーで放映されている韓流ドラマの影響で韓国のイメージがよくなり、追い風になっている。中国製も低所得層の大きな需要がある」という。

 成長めざましいアジアの中でも最後のフロンティアと目されるミャンマー市場。ブランド力で先行する日本勢に中韓が低価格で攻勢をかける戦いが本格的に始まろうとしている。

2012年10月4日  読売新聞)

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