【核の脅威】[第5部] 拡散防げるか(2)米朝 大胆過ぎる接近米国の首都ワシントンに9月、国交がないためふだんはニューヨークの国連本部から25マイル(約40キロ)以遠に出ることを禁じられている北朝鮮国連代表部の外交官とその家族16人がマイクロバスで観光にやってきた。国務省から突然、許可が出たのだ。ガイド役を務めた米民間機関のフレッド・キャリア氏によると、一行は大喜びでホワイトハウス前などで記念写真を撮っていたという。キャリア氏は、ニューヨーク・フィルの平壌公演も、来年2月の実現に向けて調整している。 いずれも、このところの米朝両国の接近ぶりを象徴する動きだ。米政府が、6か国協議を通じた北朝鮮の核放棄を待たずに、米朝関係正常化に向けて大胆に進んでいるのは間違いない。 だが、核放棄は本当に実現していくのか。 「6か国協議の共同声明には『核兵器放棄』条項が明記された。だが、我々は、その条項にはもはや拘束力がないと考えている」 米朝関係筋によると、同筋と最近会談した北朝鮮高官は、核兵器を保持できると主張していたという。 2005年9月採択された6か国協議の共同声明は、北朝鮮が「すべての核兵器および既存の核計画を放棄する」とうたっている。しかし、この高官によれば、北朝鮮は06年10月9日の核実験で「核保有国」となったため、「状況に大きな変化」が生じ、それより前の共同声明が部分的に効力を失ったというのだ。 05年まで6か国協議首席代表を務めたジェームズ・ケリー元米国務次官補は、「北朝鮮が核放棄を真剣に考えている証拠はない」と厳しい見方を示す。 北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)では5日、核施設を当面使えなくする「無能力化」実施のための専門家チームが作業を開始。北朝鮮が年内実施を約束した「次の段階(第2段階)」に着手したが、協議関係者の関心は、無能力化よりも、次の段階のもう一つの柱である「すべての核計画の完全申告」のほうに向いている。核兵器を申告するかどうか不確かだからだ。 6か国協議の米首席代表クリストファー・ヒル次官補は今月3日、都内での記者会見で、「北朝鮮は抽出した(核爆弾用の)プルトニウムを申告対象に含めると言っている」と述べたが、核兵器の数や配備場所、核実験場の詳細を申告させられるかどうかは、明確な展望を示せなかった。 何度か訪朝経験をもつ米議会筋は、北朝鮮当局者が「(核保有の状況を)ガラス張りにするよう迫るのは、強者が弱者に核放棄の圧力をかける時の常とう手段だ」と語っていたのを覚えている。「弱者」である北朝鮮は、正直に申告して手の内をさらすより、隠し通して日本、米国に脅威を与えたほうが得策と考えている、というのだ。 北朝鮮には現在、核施設停止と無能力化の見返りとなる重油100万トン相当のエネルギー支援が韓国、中国、米国の順で実施されている。米政府はさらに、日本人拉致も絡むテロ支援国指定の解除も検討中だ。 「独裁国家・北朝鮮を普通の国のように扱うのは米国の自己欺瞞(ぎまん)だ。北朝鮮が核を放棄することはない。だまされてはならない」 ブッシュ政権を離れたジョン・ボルトン前米国連大使は、こう警告している。 (2007年11月11日 読売新聞)
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