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【二本松の産科休診】安心して産める態勢を(2月9日)

 二本松市内で出産を担ってきた社会保険二本松病院が4月から産科を休診することになった。常勤の医師が3月末で退職し、後任は決まっていないためだ。4月以降に出産を予定している市内の妊婦は市外に出なければならない。妊婦のみならず家族にとっても大きな負担となる。
 二本松病院では、平成22年度に約400人の出産があった。同市を含む安達地方の出産の半数を超える。長く担当してきた医師が退職することが昨年夏に分かり、住民、自治体に大きな衝撃を与えた。
 同市は「二本松病院は地域の周産期医療の拠点。地元で出産できなくなると影響が大きい」として、国、二本松病院の上部組織に当たる全国社会保険協会連合会に医師確保を要望した。同市、本宮市、大玉村からなる安達地方市町村会も同じ趣旨の要望書を県に提出した。
 これに対して県側は「簡単に見つかる状況ではない」と厳しい状況にあることを伝えている。産婦人科医が全国的に不足している中で、本県は対出生数当たりの医師数が全国平均を下回っているため、県内のほかの医療機関から二本松病院に医師を回す余裕がないためだ。
 産婦人科医の不足を解消し負担を軽くするため、特定の病院に医師を集約することも検討課題となっている。その場合は、お産できる医療機関はかなり限られてしまう。
 もちろん、県は支援する姿勢を示している。二本松病院自体も手をこまねいていたわけではない。さまざまなルートで県外からの医師探しに全力を挙げているが、後任確保のめどはついていない。産婦人科医がどこでも足りない上、(1)東京電力福島第一原発事故による放射線問題で本県に移りたがらない(2)県立大野病院であった医療事故で産婦人科医が無罪となったが逮捕、起訴された-ことなども妨げになっているようだ。
 八方ふさがりだが、二本松病院は産科を廃止せず、今後も医師確保を目指す。病院側の努力を見守りたい。
 県は、取りまとめを進めている第六次県医療計画の中で産婦人科医の確保と育成を打ち出している。医師の処遇改善を図る医療機関への支援、病院と診療所の連携による医師の負担軽減、福島医大での修学資金による医師の確保-などである。具体化を急いでほしい。
 地元住民は産婦人科医の確保を求めて署名活動を展開している。県民が安心して暮らせるためには、身近なところで出産できる態勢を維持、充実したい。(佐藤 晴雄)

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