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原発事故後の政権交代(12月30日)

 政権奪還した自民党の政策の方向付けへの動きの早さには驚かされた。民主党が「福島の復興なくして、日本の復興はない」と言った割に、さまざまな分野において復興に向けての作業ははかどっているとは言い難い。それに引き換え、この自民党の動きは、冷静に考えると7月の参院選を控えているだけに、国民の目が厳しいことを意識しての行動なのだろう。
 東京電力福島第一原発事故後の「脱原発」「卒原発」の論議はどうなったのか。自民党政権が見えた途端に、東電の株価は高値がついた。確かに国は自民党政権のもとで40年以上にわたって原発推進をしてきたのだから、方向転換は容易ではあるまい。原発がなければ、経済が崩壊するなどの意見もあるだけに、自民党は「規制委員会の判断によって検証をしながら、安心・安全と分かれば、再稼働させることもある」とあいまいな姿勢である。
 確かに原発・エネルギー政策を明確にした上で再稼働したいことは理解できなくもないが、核燃料の再処理問題も棚上げだ。既に汚染された地域の除染さえも遅々として進まない。加えて中間貯蔵施設の場所も明確にされていない。被災地に住む者として、政権交代をしても、民主党が掲げた復興政策は踏襲してもらわないと、何か取り残された不安と悔しさを覚えて仕方がない。この狭い日本にもう一つの「フクシマ」をつくるつもりですかと問いたい。
 3・11で原発事故周辺区域は時間が止まったかのように受け止められがちだ。しかし、人が住まなくなったために家畜の野生化や雑草が生い茂り、農作物の宝庫だった土壌は荒れるなど、マイナスの時計も動き続けていることを忘れないでほしい。
 衆院選公示後に各党がこぞって本県入りをしたのは、単なる票集めというパフォーマンスだったのか。本県を思う気持ちを一過性に終わらせることのないように次なる事項を提案したい。
 まず、国会の開催されない時などに各党首をはじめ議員たちは選挙区に関係なく、ぜひ本県に来ていただきたい。しかも視察するような形ではなく、国会議員用仮設宿舎に宿泊し、被災者と同じ境遇で生活してほしい。
 経済成長、財政再建、環太平洋連携協定(TPP)、対米・対アジアなどの外交を含め、山積する問題が多いことは知っている。政策の優先順位もあるだろうが、原発事故は今後対応する問題とは違い、既に発生して2年目の冬を迎えようとしているのである。
 続いて、これからは各党の公約について3カ月、半年、1年後の実績を公開し、厳しく採点して公表していくように関係各位にお願いしたい。
 選挙が終わると国民不在の行動をされかねない。そのようなことのないように各マスコミにはそれぞれの役割を再確認して被災者の目線でチェックする態勢づくりを強化してほしい。まずは7月の参院選を目標に当分は目を光らせていこう。(玉手匡子、磐城桜が丘高同窓会「桜丘会」会長)

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