「閉じこもってないで、話してみてください」
Photo by Yoshiko Miwa
労災保険にさえ加入していない現在の勤務先。しかし吉田さんは、大きな不満を抱いていない。
「バイトとして考えたら、最低賃金じゃないし」という。
今は、再就職ができたことに感謝しており、
「働くのを第一条件にして、そこから何かを見つけられれば」
と考えている。しかし、長く勤務し続けることが可能だとは思えない。今は、
「働けるようなら働いていこうと思っているけれど、2~3ヵ月働いて、それから就職活動をしようという気持ちもあります。すごく迷っています。辞めた方がいいんだろうかとも思います」
と、迷いで一杯だ。約1年間の就職活動の末に見つけた新しい仕事が、生活保護から脱出することもできないほど悪条件だったとなれば、少なくとも、そこに中長期的な将来を見出すことは困難なのが当然だろう。
Photo by Yoshiko Miwa
そんな吉田さんは、自分と同じような境遇にある人々に、こう言いたい。
「僕も頑張らなくてはいけないけど、閉じこもってないで話してみるといいんじゃないでしょうか? 話のできる人を見つけて相談してみると、今まで自分で気が付かなかったところに、気がつくんじゃないかとも思いますよ。いろんな人とかかわり、いろんな見方を教えてもらって、知らないことを教えてもらって、それから自分がまた考える。こういうことが、とても大切だと思います」
苦境にあるときには、世界が自分に孤立を求めているように思えてしまったりしがちだ。そういう時、自分を追い詰めているように見える問題の1つ1つは、自分自身の就職であったり、職場の人間関係であったり、ごく私的な家族問題であったりするかもしれない。でも、その背景には、社会の歪みや矛盾がある。社会全体の問題に、1人で立ち向かえるわけはない。だから、苦境の時ほど、連帯が大切だ。連帯できるかどうかは、しばしば、生存できるかどうかを決めるほど重大である。
本連載の第2回~第5回では、生活保護受給者自身の率直な話を紹介した。次回からは、生活保護制度や生活保護受給者を支える立場の人々の日常や思いを紹介し、より多面的に、生活保護の「ありのまま」の姿を捉えることを試みたい。