貿易・投資相談Q&A
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技術提携・ライセンス交渉における秘密保持の取扱い
- Q. 特殊紙についての技術提携交渉を始めようと思っています。秘密保持契約はどのように扱ったらよいでしょうか。
- A.
各種技術提携交渉において秘密情報(Trade Secret、またはConfidential Information)やノウハウ(Know-how)を扱う場合、秘密保持は非常に重要なポイントです。通常ライセンサー(ライセンス許諾者)はライセンス交渉を始めるにあたり、ライセンシー(ライセンス受諾者)に対し、秘密保持契約かオプション契約の締結を要求します。
I. 秘密保持契約(Confidentiality Agreement, Secrecy Agreement)
1. 秘密保持は通常各種ライセンス契約の中で秘密保持条項として締結されますが、実は契約交渉段階でライセンサーがライセンシーに一定の情報を提供しないと交渉自体が進展しません。ライセンシーも供与される技術を評価する必要があるからです。秘密保持契約を締結しないでライセンス交渉をし、結果的にまとまらなかった場合、相手側に開示した秘密情報やノウハウは保護されません。まず具体的交渉に先立ち秘密保持契約を締結する必要があります。
2. 秘密保持契約の重要ポイントは以下のとおりです。- 供与する秘密情報やノウハウは疑義をもたれぬよう広く、明確に規定します
- 使用目的と開示する範囲を明確に規定します。特に関連会社やサブライセンシーの扱いについては注意が必要です
- 第三者への開示制限など使用の制限も明確に取り決めます
- 秘密保持期間も必要なだけ明確に取り決めます
II. オプション契約(Option Agreement)
これは選択権付契約で、ライセンス契約以前に情報を公開したくないライセンサー、契約前に情報の評価をしたいライセンシーの立場を考慮し、各種ライセンス契約によく利用されます。
ライセンサー(オプショナー)がライセンシー(オプショニー)に対し期間を限り、オプションフィーの支払および秘密保持確約と引き替えに供与技術に関する一定の情報を提示、それを評価するオプション、すなわちライセンスを受けるか否かの選択権を与えます。この場合、秘密保持条項はオプション契約の重要事項のひとつです。
以上、ライセンサーの立場から説明しましたが、ライセンシーとなる場合はその逆になります。契約当事者がそれぞれ保有する特許やノウハウをお互いに許諾しあうクロスライセンス契約や共同研究開発契約など諸々の技術提携に関してもしかるべき秘密保持契約が必要です。
参考資料・情報
「国際取引契約書式集」 国際事業開発
「国際技術ライセンス契約」 大貫雅晴 同文館
「契約条項例 秘密保持契約・共同開発契約」 一般社団法人日本商事仲裁協会
「英文契約書の書き方」 山本孝夫 日本経済新聞出版社
調査時点:2011/08記事番号:A-A10835