日本のフィギュアスケーターには「クリスマスの思い出がない」という選手が少なくない。毎年、全日本選手権が開催される時期だからだ。全日本選手権は四大陸選手権、世界選手権、世界ジュニア選手権の代表選考会を兼ねている。シーズン後半、自分は何試合に出られるのか――。そう考えると世界選手権より緊張するという選手も多く、プロスケーターの太田由希奈さんは「特別なプレッシャーがかかる試合」と語る。
今季の全日本(昨年12月)は世代交代を感じました。まず、男子で2位に入った宇野昌磨選手(愛知・中京大中京高)が乗っています。今が伸び盛りの「来ている」選手です。巡って来たチャンスをきちんと自分のものにしているところが、その証拠です。
■宇野に備わる「ひき付ける力」
彼が中学生になったばかりの頃に初めて見ましたが、当時から「ひき付ける力」がありました。まだ完成されていない部分はあるが、目がいってしまいます。当時はとても小柄で、そのハンディがバネになったのでしょうか、よく練習をする選手です。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をマスターするのにも時間がかかりましたが、いったん自分のものにすると、とても質が高く成功率も安定しています。次第に技術が伴ってきて、4回転ジャンプの確率、プログラムの細かい部分、技術も世界トップクラスに入ってきました。
さらに新世代を感じさせたのは女子です。男子よりも競技人口が多いので、競争は熾烈(しれつ)になります。ジュニアの全日本選手権で上位に入った選手には、シニアの全日本選手権への出場権が与えられています。ジュニア選手にとっては「クリスマスプレゼント」です。世界ジュニアの選考はかかっているものの、憧れの選手と同じ舞台に立てることで、楽しくて仕方ありません。プログラム全体としてジュニアの若さが残るかもしれませんが、ジュニア世代は技術を習得している真っ盛りの時期。質の良い技術を見られるのが楽しいところです。
そのような中で、中学3年生の樋口新葉選手(東京・開智日本橋学園中)が2年連続で表彰台に上がりました。のびのびと滑るといっても、表彰台に立つのはそうできることではありません。浅田真央選手(中京大)、安藤美姫さんなど、ジュニアで全日本選手権の表彰台に上がった選手は、やはりシニアでも活躍しています。
■最もスケーターらしい樋口
樋口選手は同じリンクで滑る機会も多いので、よく見かけますが、最もスケーターらしいスケーターです。スケートが本当によく滑ります。きれいに滑るスケーターはたくさんいますが、スケートの基本はスケートが滑ること。その根本ができる選手という感じがします。このインパクトはすごいものがあり、とにかく印象に残ります。
樋口選手は最初から、とてもスケートが滑っていたそうで、一度でも彼女を見かけた指導者たちは、名前こそ覚えていなくても彼女のスケートは忘れなかったほど。ブレードのよく滑る位置に乗れているからスピードが出て、その中でジャンプを決めていく力強さがあります。あの伊藤みどりさんをほうふつとさせます。スピードを最大限に生かしてジャンプを跳べるし、むしろスピードが出ないとジャンプが跳びにくいと感じるタイプでしょう。
羽生結弦、浅田真央
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