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評価できる試合だった。最悪の3月にしては

W杯アジア2次予選  日本5−0アフガニスタン (3月24日  埼玉スタジアム2002)

<日本・アフガニスタン>後半13分、ゴールを決め笑顔の清武
<日本・アフガニスタン>後半13分、ゴールを決め笑顔の清武
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 15年前、トルシエ率いる日本代表がサン・ドニでフランスに惨敗したのが、3月24日のことだった。スコアは0―5。何やら不思議な因縁を感じさせる結果である。

 実をいうと、試合内容についてはあまり期待していなかった。サン・ドニでのフランス戦に限らず、この時期の日本代表はいつも試合内容が悪い。W杯を前に監督の更迭論や悲観論が頭をもたげてくるのも、大抵は3月あたりである。多くの選手が海外でプレーするようになり、Jのカレンダーの影響力が薄れてきてからも、なぜかその傾向は続いている。

 案の定、この日の前半の日本代表ときたら、あらかじめ心の準備をしていなかったらそこら中のものを手当たり次第投げつけたくなるぐらい、お粗末だった。アフガニスタン相手に43分まで0―0!もしそのままのスコアで前半を終えていたら、さしものわたしも心穏やかではいられなかっただろう。はっきり言って、シンガポールと引き分けてしまった以上の失態といわざるを得ないからだ。

 ただ、実に幸いなことに、日本には岡崎がいた。芸術的なトラップとターン。2トップを組んだ滝川二の後輩は、何としても自分の存在をアピールしようとシュートを打ちまくっていたが、実績のある先輩は一撃で存在価値を見せつけた。なるほど、ストライカーには炎のような情熱が必要なのかもしれないが、一方、氷のような冷静さも求められるのだな、と教えられた一撃だった。

 後半に入っても、まだ日本の動きはぎごちなく、わたしは頭の中で「16年 ザックは遠く なりにけり」などと一句を詠んでいたが、2点目が入ったことでようやく選手たちはかつて自分たちがやっていたことを思い出したようだった。

 なぜ前半の日本は退屈だったのか。アフガニスタンを頑張らせてしまったのか。その最大の理由は、日本の攻めが「各駅停車」になってしまっていたから、である。それでも、時間の経過とともに選手たちはダイレクト・プレーの感覚を取り戻し、頑張るだけではどうにもならないだけの差を、アフガニスタンに見せつけるようになった。

 これが3月の試合でなかったら、5―0というスコアは不満以外の何物でもない。10―0だとしても、内容如何(いかん)では文句を連ねていただろう。申し訳ないが、アフガニスタンはその程度の相手である。

 しかし、例年の傾向として、1年で一番内容が落ち込む時期の試合で、途中からしり上がりに内容をあげたことは評価できる。このままの流れでシリア戦に入ってくれることを期待したい。

 それにしても――。ベルギーで起きたテロの犠牲者のため、試合前に黙祷(もくとう)を捧(ささ)げようという声は誰からもあがらなかったのだろうか。5年前、世界中が日本のために祈ってくれたことに感涙した人間としては、それだけが残念である。さらに残念なことに、3月24日はヨハン・クライフを失った日にもなってしまった。(金子達仁氏=スポーツライター)

[ 2016年3月26日 ]

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