サブカテゴリー

PR:

ドラフト翌日に両打ち挑戦 プロ生き抜く決意見せたG鈴木尚広

代走・鈴木は抜群のスタートで二盗を決める
<全セ・全パ>5回、代走・鈴木は抜群のスタートで二盗を決める
Photo By スポニチ

 19年も昔のことだが、今でも鮮明に覚えている。1996年のドラフト翌日。巨人に4位で指名された18歳に会いに行った。自宅で汗を流しながら黙々とバットを振っていた。驚いた。右打ちなのに、左で振り込んでいた。尋ねると、強い眼差しをこちらに向けた。

 「プロでやっていくためには足を生かさないと駄目ですからね。左の方が一塁に近いですから」

 高校3年間で甲子園に出場することはできなかった。無名の遊撃手。予想もしていなかった巨人に指名され、うれしくて練習どころではないと思っていた。ところが、一夜明けて、いきなりの両打ち挑戦である。プロで生き抜こうとする決意、意志の強さを感じた。練習にも付き合い、ラインドライブがかかった打球は怖くて捕れなかった。ダッシュをする姿を眺めた。トップスピードに乗るのが異常に早い。サイボーグ009のように加速装置が付いているみたいだった。

 3年後の99年、記者は巨人担当になった。高校3年生は21歳になっていたが、2軍暮らしが続いていた。当時の巨人は松井秀喜、清原和博、高橋由伸らスター軍団。率いるのは長嶋茂雄監督だ。華々しい世界。心配だったが、しっかりと見ていた指導者がいた。現場復帰した原野手総合コーチだ。「あの足はチームトップクラスだよ。俺は凄く期待しているんだ」。うれしかった。すぐにその言葉を本人に伝えた。

 また3年が過ぎた02年、原監督就任。24歳は足を生かすために外野に転向し、同年に1軍初出場を果たした。原監督は2年で辞めたものの、06年に復帰。第2次政権ではレギュラーを任せられる時期もあり、出場機会を一気に増やした。ただ、巨人は毎年のように補強を繰り返す。07年には谷やホリンズらの外野手が加入した。また不安になったが、一蹴された。

 「心配しないでくださいよ。僕は誰にも負ける気なんてないし、自分を磨くことしか考えていないですから」。自分に自信を持っている。努力もしている。だから、何事にも動じないし、プロで生き抜いていける。

 今季でプロ19年目。巨人の生え抜きでは最も長く在籍している。しかも、代走のスペシャリスト。37歳になっても衰えを知らず、終盤に勝負を懸ける時に代走を送る原野球の「切り札」になっている。今季、オールスターに初めて出場した。本拠地・東京ドームはもちろん、マツダスタジアムでも大歓声を浴び、2試合続けて盗塁を決めた。

 鈴木尚広。両打ち挑戦で「プロへの第一歩」を見届けた人間として、誇らしい気持ちになった。(飯塚 荒太) 

[ 2015年7月20日 10:30 ]

Webtools & Bookmarks

注目アイテム

ニュース

注目アイテム

人気ニュースランキング

    ※集計期間:

    » 続き

    【楽天】オススメアイテム
    クイックアクセス

    スコア速報

    特集

    選手名鑑

    オススメ

    スペシャルコンテンツ