党TPP対策本部(郡司彰本部長)と経済連携調査会(古川元久会長)は、TPP協定の大筋合意を受けて14日、第4弾となる現地調査団を高知県に派遣した。調査団には、対策本部事務局長で調査会長の古川元久衆院議員、同本部事務局次長で調査会事務局長の岸本周平衆院議員が参加し、党高知県連からは副代表の大石宗高知1区総支部長、幹事長の前田強県議が参加した。

JA高知中央会との意見交換

JA高知中央会との意見交換

 同県は中山間地が多く、規模に頼らない特色ある高品質な農業に取り組んでいる。輸入品との競合よりも国内の産地間競争の影響を受けやすい同県では、TPP協定の大筋合意に伴う輸入品の増加の影響がどの程度生じるのか不明な部分が多く、不安の声が多く聞かれた。輸入品との競合にとどまらない新たな課題が浮き彫りとなった。

 調査団はまず、高知市内でJA高知中央会の久岡会長をはじめとする同会幹部と意見交換した。古川会長が冒頭、TPP協定に対するこれまでの民主党の取り組み、大筋合意内容の問題点などについて説明した。出席者からは、「今回の大筋合意についてはさまざまな不安や不信がある」との声に加え、「中山間地の多い高知県では、全国一律の農業政策ではなく、その特色に応じた政策が必要になる」「農業者戸別所得補償制度は評価しており、ぜひ復活させて欲しい」など、今後の政策に対する意見が数多く聞かれた。

畜産・酪農意見交換会

畜産・酪農意見交換会

 その後、高知県及び畜産・乳製品業界との意見交換会を開催。会合には、高知県農業振興部、全農こうち、高知県牛乳普及協会、高知県酪農連合協議会、高知県畜産会などの関係者が参加し、活発な意見交換を行った。

 この会合でも出席者から、「そもそもTPPがどういうものか分からない。そのため、打つ手が本当に効果があるのか分からない」「大筋合意がされたが分からないところが多い。その不安が、農業を担っている人たちのマインドに影響しないかが心配だ。そういうことにしっかり手を打って行く必要がある」「聖域は守れなかったとの説明を受けるのかと思いきや、政府からは『聖域は守られた』との説明を受ける。これで畜産・酪農を守って行けるのか」「県の試算が本当に実態を反映しているとは思えない」との不安の声、「国は、総量としての農業産出額への影響を考えているが、産地間競争が激しくなれば、大きな影響が出てくる。経済試算では見えてこない問題がある」「流通が価格を決める。流通の協力を得ないと、第1次産業は生き残れない」「再生産可能であれば担い手もいるが、なかなかそのような状況ではない」など、現状をどう乗り越えるかという課題、「加工食品の原産地表示を徹底するような政策が必要だ」「経済界と農業が連携する体制を進めていく必要がある」「学校給食の国内・県内自給率を高めていく政策が必要」など、今後の政策の着眼点への提案も含め、さまざまな意見が交わされた。

 調査団はその後、土佐郡土佐町に場所を移し、「土佐あかうし」の肥育農家や酪農家から意見を聞いた。「土佐あかうし」は、高知県内でしか改良されていない褐毛和種・高知系の通称で、年間出荷量は約700頭ほど。高知県特有の品種であることから、ブランドの確立を目指し、関係者が精力的に取り組んでいる。肥育農家や酪農家からは、「子牛の価格が高くなっており、利益が少なくなっている」「餌に飼料用米の導入を検討したが、機材購入費用が高く、中山間地のような小さな集落ではなかなか導入が難しい」「飼料代が安定すれば経営が安定するが、なかなか難しい」など、高知県の畜産・酪農の事情に根ざしたさまざまな問題点が聞かれた。

 TPP対策本部と経済連携調査会は、今回のヒアリングで得たさまざまな意見を国会審議に活かすとともに、国内農林水産業への影響を調査するため、今後も精力的に調査団を派遣する予定だ。