党安全保障総合調査会と外務・防衛部門は27日に開いた合同会議で「安全保障法制に関する民主党の考え方」をまとめた。

 同調査会の北澤俊美会長らは岡田克也代表に答申を手交後、記者会見に臨んだ。今回の取りまとめに至る経過について、党が昨年3月にまとめた「集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更に関する見解」と、同年6月の「政府の15事例に関する見解」という、2つの安全保障法制に関する基本的見解を踏まえつつ、岡田代表の諮問に基づいて2月から議論を開始し、有識者や政府からのヒアリングなどを含め27回の会議を重ねてきたことを説明した上で、「安倍内閣の法案提出を来月に控えたタイミングでわが党の基本的な立ち位置を示すことができたと自負している」と述べた。

記者会見に臨む安全保障総合調査会役員

 答申内容について、「民主党の安全保障政策の基本姿勢としては5つの柱に要約できると考えている。ここに一貫している民主党の姿勢は、『遠くは抑制的に、近くはより現実的に』という考え方だ」と説明。議論の進め方として「『役員一任』『会長一任』という手法は一切とらなかった。すべて議論をして合意に達したら前に進む、というやり方で進めてきた」と述べ、党内で議論を積み重ねた結果として集約されたものであることを強調した。「安全保障法制に関する民主党の考え方」は明日28日の「次の内閣」会議に諮られ、最終決定となる。

 具体的な内容については広田一事務局長が説明した。その構成は次の通り(全文はPDFダウンロード参照)。

1.基本姿勢

  •  日本国憲法の基本理念である平和主義を貫く
  •  わが国の主体性を確保しつつ、日米同盟を深化
  •  国際平和活動に積極的に取り組む
  •  他国軍支援の是非はその都度見極める必要がある
  •  「切れ目のない」という名の下に、「歯止めのない」拡大を目指す安倍政権

2.自衛権について

  •  専守防衛に徹し、現実的で責任ある安全保障政策を追求する
  •  政府の新3要件は歯止めがない
  •  政府の新3要件は便宜的・意図的であり、立憲主義に反した解釈変更である
  •  政府の具体例は集団的自衛権の立法事実がない

3.グレーゾーン事態について

  •  運用改善ではなく、領域警備法を制定する

4.周辺事態法について

  •  「周辺」の概念を堅持する

5.PKOについて

  •  国連PKO活動における新たなニーズに対応する

6.国際社会の平和・安定のために活動する他国軍への支援について

  • 恒久法ではなく、特措法を検討する
  • 「現に戦闘行為を行っている現場ではない場所」という概念は容認しない

 記者団からは、自衛権について「以上、専守防衛に徹する観点から、安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」(添付4ページ)との1文について、「『安倍政権が進める』という条件がなければ集団的自衛権の行使を認めるのか」という質問が出され、福山哲郎調査会幹事長は「歴代自民党政権も含めて、こんな乱暴なことをしたのは安倍政権だけだ。『安倍政権が進める集団的自衛権は容認しない』というのは国民にとって分かりやすいと判断した」と説明。

 「民主党が政権に就いた場合には集団的自衛権を容認するのか」と質問には北澤会長が答え、「ややもすると『民主党は集団的自衛権について結論を出していない』というような論調があるが、そもそも今の状態では集団的自衛権を行使する必要性を認めていない。集団的自衛権が必要かどうかという議論は、安全保障環境や世界情勢の変化などを見極めて現実的に議論するべきことだ」と述べた。

 民主党が考える対応すべき世界情勢の変化とは何か、との問いには福山調査会幹事長が答え、「国民の皆さんが一番不安に思っているのは、尖閣諸島周辺を含めてわが国の領土・領海の問題だ。これに対しては領域警備法を制定してわが国の意思を示すということを盛り込んだ」と述べた。

 「これから本格化する国会論戦にどう挑んでいくのか」との質問に北澤会長は、(1)昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を引き続き求めていくこと(2)法制化の前に米国と首脳会談をしてガイドラインの概要を決めるという国会・国民無視の政治姿勢を追及すること(3)集団的自衛権を限定的に認めるべき立法事実がないことを論破すること――の3点を挙げた。特に(2)については「日米ガイドラインは日米安保条約に基づいてお互いの役割分担を決めるもので、わが国の政策や安全保障環境が変われば当然改定をするものだが、安倍総理は国の基盤が固まる前に米国と約束するという、今までには考えられないことをやった」と批判し、徹底的に追及する考えを示した。

PDF「安全保障法制に関する民主党の考え方」安全保障法制に関する民主党の考え方