2009年の政権交代以降、民主党政権が実現してきた政策や取り組みの一部をご紹介します。今回は税制・働く環境・障害者の自立等を取り上げます。

 

新しいセーフティネットとして「求職者支援制度」を創設

求職者支援訓練の修了者等の就職状況



 雇用保険受給期間終了後など、失業して雇用保険を受給していない求職者のセーフティネットといえばこれまでは生活保護しかなかったため、民主党政権は求職者支援法を制定し、制度を2011年10月からスタートさせました。雇用保険を受給できない求職者等を対象に無料の職業訓練の機会を提供するとともに、一定の要件を満たす場合は月10万円程度を給付し、訓練期間中はハローワークが一貫して就職支援を行います。制度開始から12年8月末までに約9万4千人が受講し、受講後の就職率は70%程度(12年6月速報値)となっています。


公平で透明性の高い税制へ 租特を透明化、廃止・縮減

 効果が十分明らかでないにも関わらず特定の分野で税負担を軽減する租税特別措置等は、特定業界との癒着につながりやすいと長年指摘されてきました。その適用実態を明らかにして効果を検証できるようにする「租税特別措置の適用状況の透明化に関する法律(租特透明化法)」を2010年3月に成立させました。最初の報告書は13年に提出されますが、政権交代以降、のべ517項目(国税・地方税含む)を対象に、135項目を廃止、のべ116項目を縮減する等、見直してきました。

租税特別措置等








新たな雇用につながる法人税の特別税額控除を創設

 新たな雇用創出につながるよう、雇用促進税制を新設。前年度から従業員が10%以上かつ5人以上(中小企業では2人以上)増加した場合、20万円×増加人数を法人税から特別税額控除できる制度で、2011~13年度に適用されます。


「新しい公共」推進の一環として寄付税制の見直しでNPOを支援

NPOを支援



 2011年度税制改正で、認定NPOとなるための基準を緩和するとともに、寄付した人について、所得税額の25%を限度として、所得税は寄付金額から2千円を引いた額の40%(住民税は10%)の税額控除をできるようにする等、寄付金税制を大幅拡充することで寄付を促進し、NPOを支援しています。



派遣労働者の雇用環境を改善。「日雇い派遣」の原則禁止

 日雇い派遣、偽装請負、派遣切りなど、労働者派遣をめぐる不安定雇用、劣悪な労働環境、使用者責任のあいまいさ等の問題が顕在化したため、2010年に労働者派遣法改正案を提出し、修正を経て12年3月に成立。

 これにより「日雇い派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止」「派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮」「重大な派遣法違反があった場合の直接雇用みなし制度(派遣労働者の受け入れ先が違法行為であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合、その時点で派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込みをしたものと見なす制度)の創設」などの規定が盛り込まれ、派遣労働者の保護と雇用の安定を前進させました。

 登録型派遣、製造業務派遣等の在り方については、引き続き検討することとなっています。

労働者派遣法改正の主なポイント


非正規労働者221万人に新たに雇用保険の適用拡大

 民主党政権は、すべての労働者を雇用保険の被保険者とすることを掲げ、2010年の雇用保険法改正により、雇用保険の適用基準をこれまでの週所定労働時間20時間以上の非正規労働者について「6カ月以上の雇用見込み」から、「31日以上雇用見込み」に緩和。これにより新たに約221万人に雇用保険が適用されました。また、事業主の未届けで雇用保険未加入となった場合にさかのぼって加入できる期間はこれまで2年間でしたが、雇用保険料が天引きされていたことが明らかである場合は2年を超えてさかのぼれるようにしました。

新たに約221万人に雇用保険が適用


パート、派遣など有期契約労働者の不安を取り除く法改正

 約1200万人と推計される1年、6カ月といった期間の定めのある労働契約で働く人は、有期雇用契約の下で生じる雇い止めの不安、有期労働契約であることを理由とした不合理な労働条件の解消が課題となっていました。民主党政権下で政府は有期労働契約に関するルールを規定する労働契約法改正案を提出し、12年8月に成立。改正法により①無期労働契約への転換(有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できる)②「雇い止め法理」の法定化(最高裁判例で確立した「雇い止め法理」の規定が盛り込まれ、適用範囲である場合は使用者による雇い止めが認められない)③不合理な労働条件の禁止(有期契約労働者と無期契約労働者の間で、期間の定めのあることによる不合理な労働条件の相違を設けることの禁止)――を規定しました。

改正法の3つのルール


障害者虐待の防止、早期発見へ国や国民の責務を定める

 これまで障害者への虐待を防止し、障害者等の尊厳を守るための法律が求められていました。民主党では政権交代の成果である「障がい者制度改革推進会議」の第1次意見も踏まえ、各党との協議を重ねた結果、2011年6月に「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」を議員立法として成立させました。養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者による障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の予防及び早期発見等に関する国等の責務、虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援措置、養護者に対する支援措置等を規定しました。

無年金・無収入をなくすため高齢者等雇用安定法を改正 

 老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が2013年4月から引き上げられますが、従来の制度では60歳定年以降、継続雇用を希望した場合でも雇用が継続されず、年金の支給もない状況になる可能性がありました。

 そこで高齢者等雇用安定法を12年8月に改正、13年4月1日から施行されます。


障害者の差別禁止強化へ障害者基本法を改正

 国連総会で採択された教育や就職などあらゆる機会における障害者差別を禁じた「障害者の権利に関する条約」の締結に向け、民主党政権では国内法の整備をはじめとする障害者制度の集中的な改革に向け、2009年12月に「障がい者制度改革推進本部」を設置し、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」をまとめ、閣議決定に至りました。それを踏まえて政府は「障害者基本法の一部を改正する法律案」を提出し、一部修正のうえ11年7月に成立しました。


地域における共生の実現へ障害福祉施策を講じる

 民主党は、障害者等が当たり前に地域で暮らせる社会を目指し、政権交代後から障害福祉施策の充実に取り組んできました。2010年4月から低所得者の障害福祉サービス等の利用者負担を無料化。同年12月に、利用者負担を応能負担とする議員立法が成立。12年の通常国会で、障害者自立支援法を廃止し、「制度の谷間」をなくすために障害者の範囲に難病等を加えた障害者総合支援法を成立させました。

 また、同じく12年の通常国会で障害者優先調達推進法を議員立法として成立させました。障害者の就業を促進し、障害者就労施設等の受注機会を拡大するために、行政機関による障害者就労施設等からの物品調達を促進するとともに、公契約において障害者の法定雇用率を満たしていること又は障害者就労施設等から相当程度の物品等を調達していることに配慮すること等を定めました。

障害福祉サービス 予算額の推移

(プレス民主10月5日号より)

参考: