2009年の政権交代以降、民主党政権が実現してきた政策や取り組みの一部をご紹介します。今回は「無駄を見直し予算の使い道を変える」「地域活性化への取り組み」「中小企業の元気を後押し」「成長戦略」等を取り上げます。

無駄を見直し予算の使い道を変える

「官から民へ」「コンクリートから人へ」。点検と見直しで予算構造を粘り強く改革

 民主党09年マニフェストの基本は「税金の使い道を変える」「無駄遣いの根絶」です。そうした理念に基づき政権交代直後の2009年9月18日に行政刷新会議の設置を閣議決定し、事業仕分けや行政事業レビュー等に順次着手。国の予算が有効に使われているか、本当に必要なものであるかなどの検証・点検を重ね、無駄削減に向けた成果を上げました。


税金の使い道を変える

 政権交代以降の3年間で公共事業費は32%削減し、社会保障や教育・子育て等に重点を置いた予算配分を実施。民主党が「コンクリートから人へ」と訴えて掲げてきた人重視の政策に重点的に予算配分する形を実現しました。

無駄の削減、予算の組み替え等を行う

 「国の総予算を徹底的に効率化。無駄遣いや不要不急な事業を根絶」する取り組みとして09年マニフェストでうたった必要財源確保については、行政刷新会議による「事業仕分け第1弾」(2009年)で国が行う事業のうち449事業の仕分けを行い、約2兆円分を2010年度予算に反映しました。この政権交代後初の予算で、公共事業を1.3兆円節減、補助金を0.7兆円節減するなどして、「子ども手当」や「高校無償化」など重点政策を実施しました。11年度には約6.9兆円の財源を捻出し、うちマニフェスト関連施策に約3.3兆円を活用しました。

 「事業仕分け第2弾」(10年)では独立行政法人や政府系公益法人が行う事業のうち233事業を仕分けし、76事業を廃止、その他の事務事業の徹底的な見直しも行い、不要資産約2兆円が国庫納付されました。

 「第3弾」(10年)では特別会計で実施している事業の評価や国が行う112事業の再仕分けを行いました。また、仕分けの公開・外部性を取り入れて各府省が原則すべての事業を予算概算要求前に点検評価する「行政事業レビュー」(10年から)を導入。情報公開を徹底し、一部の事業は公開の場で議論し、お金の流れや点検結果を分かりやすく示す取り組みを行いました。

天下りあっせんの禁止と根絶への取り組み

独立行政法人の役員に就いている退職公務員の状況

 政権交代直後の2009年9月、官民人材交流センターによる再就職援助(天下りあっせん)の原則禁止を決定しました。

 また、独立行政法人の役員の任命に際して公募制度を導入しました。こうした取り組みによって、官製談合や随意契約などの税金の無駄遣いの原因となっていた天下りの根絶の取り組みが大きく前進しました。

国家公務員の人件費約1割カットを実現、2割を目指す

 09年マニフェストで掲げた国家公務員の総人件費5.3兆円の「2割削減」については、給与改定、定員純減などに加え、厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性から2年間の時限立法で2012年2月に成立した、国家公務員給与を平均で7.8%削減する「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」によって、すでに約1割(約5200億円)を削減。さらに退職手当の見直し等を進め、2割削減を目指します。

地域活性化への取り組み

国の「ひもつき補助金」を地方の裁量で使える財源に転換

地方の裁量で使える自主財源へ

 地域主権の確立に向け、国が使途を縛る「ひもつき補助金」を見直し、実施事業をメニューの中から地方が自由に選べる一括交付金を創設。2011年度予算で都道府県を対象に5120億円(地域自主戦略交付金等)を措置しました。12年度予算では、事業メニューを2倍に増やすとともに、対象自治体に政令指定都市を追加し、総額を8329億円に拡充しました。また、より質の高い住民サービスが確保できるよう、国が法令で地方の自治事務の実施方法を縛りつけている義務付け・枠付けの見直しも行いました。これらにより地方が自由に使える財源が充実するとともに、地方の自由度も高まり、「地方のことは地方で考え決められる」形が整いつつあります。

国と地方の協議の場を設置

 「国と地方の協議の場に関する法律」が2011年4月に成立。地方に関わる課題について国と地方が協議を行う場が制度化されました。地方自治に影響が及ぶ国の政策の立案や実施に関して、国と地方が協議するようになり、11回の協議を行いました。

 また、自民政権、自公政権下等で行われてきた国が地方に対して一方的に負担を求める国直轄事業の地方負担金のうち、道路・河川などの維持管理負担金については10年度に廃止。地域主権への取り組みをさまざまな角度から加速させました。

国と地方の協議の場に関する法律の概要

郵便局ネットワークを復活 

 自公政権が拙速に進めた郵政民営化には国民生活の利便性の低下や地域社会で金融サービスが受けられなくなるおそれがあるなど、深刻な問題が山積していました。民主党政権では09年マニフェストに基づき、政権交代直後に郵政株式売却凍結法を成立させました。12年4月には「郵政3事業の一体的サービス提供」や「郵政事業の利便性と公共性を高める改革」を盛り込んだ郵政民営化見直し法(郵政民営化法等の一部を改正する等の法律)を成立させました。

 郵便局株式会社と郵便事業株式会社を合併し、名称を「日本郵便株式会社」に変更。統合により経営の効率化が図られました。過疎地などで郵便配達時に貯金の預かりできない、最寄りの郵便局が小包を集配できないといった分社化による不便が解消でき、利便性が向上します。「日本郵便株式会社」に郵便局をあまねく全国に設置することを、また「日本郵便株式会社」と「日本郵政株式会社」に郵便業務と貯金・保険の基本的サービスを一体的に提供することを義務づけました。政府は引き続きユニバーサルサービス義務を負う「日本郵政株式会社」(特殊会社)の株式の3分の1超を常時保有し、日本郵政株式会社は「日本郵便株式会社」の株式の全部を保有することを義務づけ、郵政3事業のユニバーサルサービスを担保するようになりました。

郵便局ネットワークを復活

中小企業の元気を後押し

貸し渋り・貸しはがし対策等を実施、使い勝手のいい「特別信用保証」も復活

日本経済の基礎強化へ

 2009年12月に貸し渋り・貸しはがし対策として「中小企業金融円滑化法」を施行するとともに、11年3月には同法を12年3月まで1年間延長。公的金融でも貸付条件変更を推進しました。

 また、対象業種を原則全業種とした「景気対応緊急保証」を10年2月に開始し、「特別信用保証」を実質的に実現。本制度は11年3月末で終了しましたが、同年4月以降は業績が悪化した中小企業を対象にしたセーフティネット保証5号(業況の悪化している業種)の対象を原則全業種として実施しました。

中小企業の資金繰り支援のため補正予算で継続的に対処

 2011年度には4次にわたる補正予算により、予算額約2兆円を措置し、事業規模にして約30兆円もの中小企業資金繰り対策を実現しました。これによって東日本大震災や円高等の影響に苦しむ中小企業が事業に取り組みやすくなるよう、資金繰りを強力にサポートしました。

2011年度補正予算による中小企業支援

中小企業の法人税率引き下げで日本経済の基礎をつくる

 民主党は中小企業やその経営者の皆さんを支援することは日本経済の基礎強化につながるとの基本認識のもと、09年マニフェストで「中小企業の法人税率を18%から11%に引き下げ、融資に対する個人保証を見直します」とした政策について、まず2012年度分から15%への引き下げを実施しました。

 ただし、東日本大震災後は復興増税のため実質は16.5%となっています。

一人オーナー会社の役員給与の損金算入を認める

 2010年の税制改正でいわゆる一人オーナー会社(特殊支配同族会社)の役員給与についての損金不算入措置を廃止しました。「中小企業の活性化を阻害する要因でもある」との指摘もあった同措置を廃止することで、中小企業の経営者支援につなげました。

成長戦略

観光振興に向けオープンスカイを推進し首都圏空港を強化

 新たな成長戦略として観光分野を重視、日本からの国際航空ネットワークの充実を図るため、オープンスカイを戦略的に推進しました。オープンスカイ協定締結後は発着枠や路線、便数などの決定権を国ではなく航空会社が持つことになり、これにより航空の利便性が向上し、航空会社の競争力の強化につながります。

 民主党政権は2010年10月、米国と協定締結。12年10月現在は韓国、香港、マカオ、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、スリランカ、アメリカ、カナダ、ブルネイ、台湾、英国、ニュージーランド、フィンランド、フランス、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーと締結しました。

 10年10月から国内線ハブ空港の国際化が実現。「羽田から海外に行けるようになって便利」と感じていただけるようになり、利便性と経済効果が向上しました。

2030年代原発ゼロに向け新エネ開発・省エネ推進

 エネルギー自給率がわずか4%の日本にとって、再生可能エネルギーの普及・促進は最重要課題です。発電時にCO2をほとんど排出せず地球環境にやさしいエネルギーであることからも注目されています。

 民主党政権は2011年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」により、再生可能エネルギー源によって発電した電気を一定の期間・価格で買い取ることを電気事業者に義務付ける制度を12年7月1日からスタート。これまでの政権下ではなかなか普及が進まなかったなか、この制度によりコスト回収の見通しを立てやすくなり、多くの人が設置しやすくなる環境をつくりました。

 また、2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、グリーンエネルギー拡大等に向けてあらゆる政策資源を投入すること等を内容とする「革新的エネルギー・環境戦略」を12年9月にエネルギー・環境会議で決定しました。

再生可能エネルギー買い取り制度

再生可能エネルギー買い取り制度


(プレス民主2012年11月16日号より)

参考: