民主、維新、共産、生活、社民の野党5党は2日午前、「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」(介護職員等の処遇改善法案)を共同で衆院に提出した。介護・障害福祉従事者が重要な役割を担っているにもかかわらず、その賃金が他の業種と比較して低い水準にある現状を前に、介護・障害福祉従事者の賃金改善の特例措置を定めることで、人材確保につなげ、高齢者・障害者・障害児に対する支援の水準向上に資することを目的とするもの。

 人材確保のため、賃金改善措置を行う事業者に助成金を支給するもので(1)介護・障害福祉従事者のみを対象にする賃金改善に充てられる「介護・障害福祉従事者処遇改善助成金」(1人当たり月額平均1万円を上昇させることを想定)(2)介護・障害福祉従事者及びその他の従業者の両方を対象にする賃金の改善に充てられる「介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金」(1人あたり月額平均6千円を上昇させることを想定)――の2種類の助成金から事業者が自社の都合で選択できるようになっている。

法案提出後に揃って記者会見。前列中央が中島議員

法案提出後に揃って記者会見。前列中央が中島議員

 法案提出後の記者会見で筆頭提案者の民主党の中島克仁衆院議員は、介護現場の窮状はまったなしだとの危機感を示すとともに、「安倍政権は1億総活躍社会の3本の矢のひとつとして介護離職ゼロを掲げているが、2015年度の補正予算や16年度予算を見ても、介護人材確保のための処遇改善に真剣に取り組む姿勢は見られない。このままでは介護従事者の低処遇を放置してしまい、介護人材不足に拍車がかかって2020年代初頭までの25万人の介護人材確保など到底難しく、介護離職ゼロなどとても成し遂げられない」と指摘。処遇を改善し介護人材を確保することが不可欠だという共通認識のもと、野党5党間で共同提出に至った旨を語った。

20160302介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案 ポンチ絵

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泉健太議員

泉健太議員

 山井和則ネクスト厚生労働担当は「介護職員離職ゼロを実現しなければ介護離職ゼロにはならない」と強調。「当選前、短期間だが介護の現場で働いていたことがある」と語った泉健太議員は、当時から結婚すると低賃金で生活が成り立たないという理由で離職するケースが目立っていたが、現在はその状況がさらに深刻化するとともに、制度が緻密になり入所者の健康管理への細かい対応など勤務内容が複雑化しているにもかかわらず待遇が改善されないなか、介護現場で人材が確保できなくなるのは至極当然の流れであると指摘。「アベノミクスで実質賃金が下がっていることが問題。私たちは働く方々の賃金が上がっていくような政策を確実にうっていく。大事な法案であるので成立に向けて与野党協議に真摯(しんし)に取り組んでいく」と述べた。

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PDF「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案資料 助成金の金額・予算規模の総額」介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案資料 助成金の金額・予算規模の総額