2022年球春の目玉、日本ハム・新庄剛志新監督(49)のキャンプインがいよいよ2月1日に迫った。阪神の暗黒時代をともに支えた元投手、川尻哲郎氏(53)が3回連続でマル秘エピソードを紐解く第2弾。BIGBOSSの野球人生はやはり、野村克也監督を抜きには語れまい。 (構成・岩崎正範)
つくづくヤツとは縁があるね。同僚時代の新庄はよく「ジリさんが投げているときは僕、よく打ってるんですよ。わかってますか?」とアピールしてきた。確かにオレが勝ったときはホームランも多くて、振り返れば1998年の5月26日の中日戦でノーヒットノーランを決めた試合も、結果は2―0だったんだけど、1点目は新庄が打って2点目はオレのスクイズ。そのときの新庄の打順は8番だったよ。
野村監督のもとで新庄は、エンゼルスの大谷君よりも先に二刀流で投手にも挑戦したけど、とにかく監督に愛されていたね。野村監督は巨人の長嶋さんみたいに派手で目立つタイプが好きじゃないけど、新庄は本気でかわいがっていた。
それを象徴する一件があった。オレが2軍から1軍に上がってきたときかな。当時は監督の方針で「茶髪、ひげは厳禁」だったんだけど、そういうのがオレは元々あまり好きじゃない。それでひげ面のままでいると、野村監督が「おい、茶髪、ひげはダメなのにどうなってるんや?」と言ってきたから、「なら新庄はいいんですか? 茶髪じゃないですか?」と言い返した。
当然、こっちとしたら何かまた言ってくると思うじゃない? ところが野村監督は「それはまあ、う~ん…」とうなるだけで、声が出てこない。すぐにその後、松井優典ヘッドら首脳陣に呼び出されて、「頼むからひげを剃ってくれ」と(笑)。オレもバカだから、「おかしい、何で新庄だけいいんですか。納得いきませんよ!」と抵抗はしたけど、最後は渋々剃ったよ。
そのとき思ったのは、野村監督はよほど新庄を認めているんだな、ということ。どうしてかと考えると、新庄の言動には一切嫌味がない。うるさ型の野村監督でも好きになってしまう、魅力のひとつになっていた。嫌味がないから愛される。当時の新庄は、チームの誰からも悪く言われることはなかった。
新庄が投手に挑戦する姿は同じブルペンで見ていた。こっちは半信半疑ではあったけど、すごい速い球を投げていたから「先発はないにしても抑え、中継ぎはあるかも」と思っていた。結局は公式戦での登板もないまま投手挑戦は終わったんだけど、その理由がいかにも新庄らしくてね…。 =明日に続く