岡田克也代表は25日、民主党代表として最後となる定例記者会見を開いた。

 岡田代表は「1998年に結党以来18年間、今日まで民主党を支えていただいた全国の党員・サポーターの皆さん、地方自治体議員の皆さん、関係者の皆さんに心からお礼を申し上げる。本当にありがとうございました」と感謝の弁を述べた。

 その上で、「この間いろんなことがあった。自民党の1強体制を崩し、それに代わる政権を作るという試みは、本格的な試みとしては、新進党が初めてだったと思う。その前の社会党は候補者を過半数立てるということはなかった。しかしその新進党の試みが短い期間で、突然の解散ということでなくなり、そして民主党結党になった」「当時、大きくは3つのグループが1つの民主党になった。旧民主党、われわれ民政党、新党友愛の3つのグループで綱領を作ろうということで、旧民主から枝野さんが、新党友愛から川端さんが、民政党から私が出て、3人の政調会長が2日ぐらいかけて議論をしながら綱領を作ったことを思い出す」「川端さんは知らない人ではなかったが、枝野さんははその時にはまだ交流がなく、どういう考え方をするのか未知数のところがあった。しかし、話をしてみてかなり共通点があることが分かってホッとしたのを思い出す。それが民主党のスタートだった」と、98年の結党時を振り返った。

 民主党の実績については、「『政権を担える政党を作る』ということで、様々な試みもしてきた」と述べた。当時の「議員立法」は実際には政府が作成したものが多かったとし、「本当の意味で議員が国会議員が作る議員立法がほとんどない中で、民主党が先鞭をつけて、議員立法を当たり前のものにした」と紹介した。また、候補者の擁立についても「地盤・看板・かばんのない若者が公募を経て国会議員になるという道を作った」と述べ、「この2つが民主党が政権を担うまでの一番大きな功績だ」と評した。

 政権時代については「もちろんできたこともたくさんあるが、非常に苦しい、反省の多い3年3カ月だった。特にリーマンショックのどん底から政権を担い、何とかして少しでも立ち上がろうという、その過程で東日本大震災、福島の原発事故が起きるという中で、苦しい思い出が多い3年3カ月だ。最終的には党の分裂という事態も招いた」と、振り返った。

 その後の野党としての今日までの民主党については「海江田さん、私と民主党の再生に努力してきた。この3年数カ月間を振り返って『どこまでできたのか』ということはあるが、確実に民主党再生に向かって進んできたことは間違いないと考えている」とし、「この度、その民主党から民進党と、野党勢力の再結集という大きな一歩を決めることができたのは、自分ながら本当に良かったと思っている。この民進党結党も1年間かけて長い道のりだったが、いろいろな障害を乗り越えて、最終的にはいい形で結党の日を迎えられるのではないか」と述べた。

 その上で「これまでの皆さんのご理解・ご支援に心から感謝申し上げたい。そして、結党の日以降、民進党でもう1回国民の皆さんに信頼され、日本の政治の本流を担える政党を作っていく。そのためにしっかり努力していきたい」と新党への決意を語った。

記者団との質疑応答

新党結成について

 記者団から、「民主党に点数をつけると」と問われ、「難しいが、合格点だと思う。戦後政治の中で、選挙を通じて自民党政権を倒し、政権交代を成し遂げたという意味では今までにないこと。それを成し遂げた政党であるという意味では合格点だ。ただ、もちろん反省すべきことはたくさんある」と語った。

記者会見で岡田代表

 民進党は国民のどういう人々を代表する政党にしたいと思っているか、との問いには「中間層は確かに薄くなって、『1億総中流』などと言われた時代は遠い過去のものになっている。しかし、われわれはその中間層をもう一度分厚くする政党でありたいと思う。同時に、2極化が進む中での所得の少ない人たちの底上げということがわれわれの役割だと考えている。民進党はその2つのことを同時にやっていかなければいけない」と力を込めた。

 冒頭発言にあった「日本の政治の本流になる政党」の具体的なイメージを問われ、「今、安倍自民党がかなり右に寄って、従来自民党の支持層であった人も含めて、無党派層と言われる人たちが、『支持政党なし』として取り残されていると思っている。そうしたところも含めて、左右の極端な考え方を除いた大半の皆さんから支持される政党を目指したい」「かつての自民党で言えば宏池会的な考え方をしていた人たち、『保守リベラル』と言われる人たちも含めて支持される政党でありたい」と語った。

 自民党の右傾化については、岡田代表自身が自民党を離党した後も、自民党の故後藤田正晴衆院議員と宮澤喜一元総理には定期的に意見を聞いていたことを明らかにし、「(安全保障については)この2人と私の考えはほとんど違わないと思っている。ただ、自民党が勝手に右のほうに行ってしまった。その自民党の中で、リベラル的な考えを持った人たちも含めて民進党に結集していくことが必要だと思っている」と述べ、今後さらに幅広い結集を呼び掛けていく考えを示した。

 民進党に、自民党にも民主党にも属したことがない、旧みんなの党や結いの党出身の議員たちが含まれることをどう受け止めているかと問われ、「私はまったく違和感がない。むしろ旧結いの党の、特に若手の皆さんは非常に改革志向の強い、ぜひ育てたいと思っている議員がたくさんいる。民進党にとって大きな財産だと思っている」と述べた。

 投票率の低下や無党派層の増加が進む中、政治への支持・関心をどう取り戻していくか、との問いには「主張が明確で分かりやすいことも必要だが、最近の国政選挙で投票率が下がっているのは、自民党が勝つことが分かっている中で、投票に行かない人が結構いるのだと思う。その原因の一つは野党が分裂していて、とても勝てないという状況がある」「今回の民進党の試みは、野党が結集して1つになったということと、今後も(民進、共産、生活、社民の)野党4党が協力するという2つの点で、国民の皆さんに期待していただける条件が、できつつあると思っている。その中で結果を出していきたい」と述べた。

 その上で「ダブル選挙も、その観点から言うと決して悪いことではない。投票率が上がれば、どちらに有利に作用するかということはいろいろな可能性がある。もしダブル選挙になったとしても、しっかりと高い投票率の中で、自民を強く支持している人以外のところの支持をいただいて、いい結果を出していきたい。その可能性はある」と自信を見せた。

岡田代表が記者の質問に答える

 岡田代表が1年前に代表に就任した際、「私は変わる」と言っていたことについて、「変わった」という意識はあるのかと問われ、「最初から『変わった』と思っていた」と応じ、「われわれは民進党として本気で政権を目指していく。もちろん、参院選で結果が出なければそれは夢物語に終わる。参院選で結果を出して流れを変えて、そしてそれを基礎に次の総選挙では政権を取りに行く。そういった本気度を国民に皆さんに感じていただけるように頑張りたい。もう1回、2つの政党がお互い競い合い、政権交代のある政治を実現したい」と、民進党に変わることで党として大きく飛躍させたいとの意欲を語った。

 また、「今、心に去来する言葉を書いて」と頼まれたら何を書くかとの問いには、しばらく考えて「『政権交代ある政治』と書くでしょうね。25年間変わらず。まだ1回しかできておらず、安定的に政権交代できる状態にはなっていない」と応じた。

 なお、この記者会見の直前に開かれた新党協議会で、岡田・松野両代表が合併協議書に署名したこと、また、人事についても両代表で相談し、おおむね合意に達していることを明らかにした。これを踏まえ27日の結党大会では、代表、代表代行、幹事長、政調会長、国会対策委員長、選挙対策委員長が選任される見込みであるとした。

衆院選挙制度改革について

 衆院選挙制度改革について、公明党がこれまでの方針を転換し、10年毎の国勢調査を基にアダムズ方式を導入することを容認したことを踏まえ、あらためて民主党の方針を問われ、「(2010年の国勢調査に基づくべきという)われわれの基本的な考え方は変わっていない。公明党が2010年か2020年と言うなら、議論はそこに戻るのでは」とした上で、より重要な問題点としては「区割り審設置法の本則に都道府県配分の基準(=アダムズ方式)を明確に書くということがないと、本当にアダムズ方式が導入されるかどうかすら分からない。それが大前提だ」と強調した。

 また、自民党は2020年の国勢調査に基づくべきとしていることについては「違憲状態という判決が出る可能性は非常に高い。もし自民党が『そうではない』というのなら、どういう考え方なのか説明する責任がある」「アダムズ方式に先行して6減案をやるというのが自民党の提案のようだが、それが果たしてアダムズ方式を入れたことになるのか、自民党の説明を聞きたい」と述べた。

一部野党が検討している消費増税凍結法案について

 一部の野党内に来春の消費増税引き上げを凍結する法案を出そうという動きがあることについては「そういう主張のある野党があることは承知しているし、そ うした法案を出すことはもちろん自由だが、わが党としては、(引き上げの)さまざまな前提を満たす努力をすべきだと申し上げてきているので、無条件に消費増税を止めるべきだとは言っていない。これからの経済状況、安倍総理の国会での説明などを見極めつつ、最終的にどうするか決めていくことになる」と述べ た。

その他の質問

 加藤1億総活躍担当大臣が、各政党に女性候補者の数値目標や行動計画を設けるよう、働きかけを始めたことについては「その報道に接して違和感を感じた。 まず与党がしっかりやってはどうか」と苦言を呈し、自らの足元である自民党にこそまずは働きかけるべきとの認識を示した。

 自民党の大西英男議員が「巫女のくせに」などと女性を侮辱する発言をしたことについては「コメントするのも政治家として恥ずかしい。こうした発言で政治に対する信頼が失われていくとすれば、非常に残念なことだ。自民党の中でしっかり対応していただきたい」と述べた。

 なお、記者会見終了後には党公認キャラクターの「民主くん」から新党への激励メッセージを受け取り、また、岡田代表から民主くんに花束を贈ってこれまでの尽力を労った。

岡田代表から民主くんに花束を