テニス女子で世界ランク2位の大坂なおみ(23)=日清食品=は27日、女子シングルス3回戦で、チェコの同42位のマルケタ・ボンドロウソバ(22)にストレートで完敗。試合後に通過義務のある取材エリアのミックスゾーンを通らずに会場を出たために一騒動となった。
5月下旬の全仏オープンでメンタルヘルスを理由に取材を拒否して棄権し、今大会で復帰した大坂。聖火の最終ランナーを務めて体調も良さそうで、前試合までは取材にも笑顔で対応していたが、敗戦のショックは隠せず、取材陣を避けるように足早に会場を後にした。
しかし、五輪のミックスゾーンは通過しなければ約2万ドル(約220万円)の罰金も科せられるだけに日本協会幹部が戻るよう説得。約25分後にミックスゾーンにようやく姿を見せた。
「プレーできたことはよかった」と一言。報道陣が「結果は残念だったが…」と問うと、無言で涙をこぼし、うなだれた様子のまま引き上げた。<page/>
今大会では体操女子4冠の米国のシモーヌ・バイルス(24)も、メンタルの不調を理由に団体総合決勝を途中棄権。英紙ガーディアン(電子版)は28日、2人について「裸足のままラケットを握り、保護フィルターなしで大人の人生を送ってきたようなもの。いつでも(重圧を)振り払える分厚い皮膚はない。(2人とも)この状況を無傷で切り抜けられるほど強力な自己意識も持っていない」と論じた。
米誌スポーツ・イラストレーテッド(電子版)も28日、「アスリートがいつでも棄権でき、人々がそれを賞賛するようなことは前例のないことのように思う」と切り出し、スポーツを見る意義について、「その人のありのままの姿を見るために見ているのだ。今年、あなたが見たバイルスと大坂の姿は、必ずしも彼らの最高の状態ではなく、彼らの真の姿だったのだ」とした。
対照的だったのは錦織圭(31)。4日連続の試合となったが、シングルス2回戦でマルコス・ギロン(米国)をフルセットで下し、大坂にも「五輪は大変な大会だが、1大会にすぎない。また気を取り直して頑張ってほしい。連絡するつもり」とおもんぱかる余裕もみせた。