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【「八重」の年】会津の真価が問われる(12月28日)

 広く全国の関心を会津に集めると期待されるNHK大河ドラマ「八重の桜」がいよいよ、1月6日から放送される。会津若松市の旧会津図書館跡に整備された「ハンサムウーマン八重と会津博 大河ドラマ館」の開館は同12日。八重にちなんだ商品開発やイベント企画なども各地で相次ぎ、観光客の増加が見込まれる。熱気とにぎわいを復興への力として進んでいかなければならない。
 会津への注目度の高まりは、多くの目が地域の受け入れ態勢に向けられるということでもある。ドラマ効果による入り込み増に甘えて接客態度が雑になったり、誘客の努力がおろそかになるようなことがあれば、好機を生かせないばかりか逆に評価を下げかねない。会津が本県全体の復興の先導役となる重みをかみしめ、訪れてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れずに親切な対応を心掛けたい。
 「八重の桜」先行上映会では、見た人から会津人の生き方や教育理念の描き方、映像の美しさに感嘆の声が上がった。この素晴らしいドラマを活用できるかどうかは地域の取り組みに懸かっている。
 ドラマ館の年間の目標入場者数は60万人だ。とうほう地域総合研究所は本県への経済波及効果を111億円と試算している。日銀福島支店の試算は113億円。観光客を温かく迎えて会津ファンを増やせば、目標入場者と経済試算を上回る「うれしい誤算」という成果を手に入れることも夢ではない。
 首都圏の旅行代理店関係者が、まちなか周遊バスで会津若松市内を巡った体験に基づいて気になる話をした。鶴ケ城近辺のバス停から城までの道筋の案内が不十分-との指摘だ。各バス停の標識には城と停留所との位置を示す略図が付いている。城は目と鼻の先だ。地元の人間には何の問題もないと映る。だが、停留所からは樹木などに遮られ天守閣が見えないこともある。旅行者にとっては短い距離でも、より分かりやすく方向を示す案内板が欲しいという。
 外部の目を通すと浮かび上がってくるものがある。ドラマ放送を機に、観光客の立場で関連施設や設備などを丁寧に点検する作業が必要ではないだろうか。花見と重なる春の観光シーズンはかなりの人出が予想されるため、万全の駐車場確保・渋滞緩和対策も求められる。
 大河ドラマによる盛り上がりを1年限りで終わらせず、いかに恒久的な観光振興に結び付けるか。八重が輝く新年は、会津の真価が問われる年でもある。(佐藤研一)

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