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生活保護のリアル みわよしこ
【第3回】 2012年7月13日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

“自業自得”で支援を打ち切っていいのか
アルコール依存症者の日常から探る生活保護の必要性

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アルコール依存症の治療を中心とした、現在の日常

北島さんの住まい近くには、多数の福祉物件(生活保護受給者を主な対象とした民間アパート)がある。その多くは、十分なメンテナンスをされていない。
Photo by Yoshiko Miwa

 現在の北島さんは、会社員のように規則正しく、東京都内の精神科デイケアセンターに通っている。アルコール依存症に関して定評のある精神科デイケアセンターの一つだ。

 朝は、午前4時から5時のあいだに起床。朝食は食べずにTVを見る。主にニュースを見る。

 8時45分、住んでいるアパートを出て、デイケアセンターに向かう。

 9時30分、デイケアセンターのドアが開くのと同時に中に入る。

 10時から16時までは、デイケアに参加する。参加にあたって、自己負担は必要ない。

 デイケアには、さまざまなプログラムがある。アルコール依存症者のためのミーティングや認知行動療法など精神科デイケアらしいプログラムもあれば、身体を動かすプログラムもある。このデイケアセンターは、プログラムの選択や参加を各自に任せ、強制は一切しない方針だ。デイケア時間帯に外出もできる。しかし北島さんは、ミーティング等に真面目に参加する。

 昼食は、デイケアの一環として提供される(注3)ものを食べる。

 16:00、デイケア終了とともに帰途につく。買い物などをして、17:30には帰宅する。

 北島さんはご飯を炊き、買ってきた惣菜と一緒に夕食とする。一日の食費の予算は500円ということだ。テレビのバラエティ番組を見たり洗濯をしたりして、22時には寝る。

 休日は、アルコール依存症者自助グループの仲間とソフトボールを楽しんだりもする。

 することのない時間はない。仲間もたくさんいる。「ヒマ」と孤立はアルコール依存症患者の大敵だ。飲酒の動機になりうるからだ。しかし北島さんは、どちらとも無縁だ。

 断酒生活は、もう13年も続いている。

 北島さんは、現在の生活に「大満足」という。

(注3)
かつて、精神科デイケアで食事提供を行う場合には、一日480円の食事加算が診療報酬の一部として支払われていた。この制度は、2010年に廃止された。以後、多くのデイケアセンターが、持ち出しで利用者負担なしの食事提供を続けている。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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