アルコール依存症の治療を中心とした、現在の日常
Photo by Yoshiko Miwa
現在の北島さんは、会社員のように規則正しく、東京都内の精神科デイケアセンターに通っている。アルコール依存症に関して定評のある精神科デイケアセンターの一つだ。
朝は、午前4時から5時のあいだに起床。朝食は食べずにTVを見る。主にニュースを見る。
8時45分、住んでいるアパートを出て、デイケアセンターに向かう。
9時30分、デイケアセンターのドアが開くのと同時に中に入る。
10時から16時までは、デイケアに参加する。参加にあたって、自己負担は必要ない。
デイケアには、さまざまなプログラムがある。アルコール依存症者のためのミーティングや認知行動療法など精神科デイケアらしいプログラムもあれば、身体を動かすプログラムもある。このデイケアセンターは、プログラムの選択や参加を各自に任せ、強制は一切しない方針だ。デイケア時間帯に外出もできる。しかし北島さんは、ミーティング等に真面目に参加する。
昼食は、デイケアの一環として提供される(注3)ものを食べる。
16:00、デイケア終了とともに帰途につく。買い物などをして、17:30には帰宅する。
北島さんはご飯を炊き、買ってきた惣菜と一緒に夕食とする。一日の食費の予算は500円ということだ。テレビのバラエティ番組を見たり洗濯をしたりして、22時には寝る。
休日は、アルコール依存症者自助グループの仲間とソフトボールを楽しんだりもする。
することのない時間はない。仲間もたくさんいる。「ヒマ」と孤立はアルコール依存症患者の大敵だ。飲酒の動機になりうるからだ。しかし北島さんは、どちらとも無縁だ。
断酒生活は、もう13年も続いている。
北島さんは、現在の生活に「大満足」という。
(注3)
かつて、精神科デイケアで食事提供を行う場合には、一日480円の食事加算が診療報酬の一部として支払われていた。この制度は、2010年に廃止された。以後、多くのデイケアセンターが、持ち出しで利用者負担なしの食事提供を続けている。