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思い出す開幕試合…38歳で初の開幕投手も悔しい黒星

2007年に開幕投手を務め、3回に内野安打でチーム初安打を放った下柳
2007年に開幕投手を務め、3回に内野安打でチーム初安打を放った下柳
Photo By スポニチ

 待ちに待った2014年プロ野球が、ついに開幕しましたな! 下柳です。3月29日は札幌ドームで日本ハム―オリックス戦を見てきました。どんなシーズンになるのか、本当に楽しみですな。

 さて、今回は開幕戦の思い出を書くことにしますわ。2007年3月30日の広島戦。京セラドームでのオープンニングゲームで、俺自身、初の大役を任された。

 実は2006年10月に、左肘の手術を受けたばかりでね。当初は開幕どころか「5月の最初ぐらいに投げられたらいいな」というぐらいのもんやった。

 チームとしてはダッペ(井川慶)がヤンキースへ移籍しただけでなく、開幕候補と見られとった福原忍、安藤優也が春季キャンプ中に相次いで故障した。それぐらいから、俺もペースを上げて、急ピッチで仕上げていくことになった。

 忘れもせん。開幕投手を告げられたのは、開幕の2週間ぐらい前やった。開幕ローテーションに入る俺、能見、小嶋、ジャン、江草、ボーグルソンの6人が岡田監督の部屋に呼ばれた。そしたら、いかにも岡田さんらしい口調でね。

 「こうなったら、しゃーない。シモが開幕や」

 何とな〜く、予感めいたものはあったけど、いよいよ来たか、という心境やね。38歳にして、この大役を任される時が来たか、と。率直に言えば、やる気半分、不安半分、という感じやった。

 春季キャンプの途中、慌てて、つくった割には調整は順調やった。05年には最多勝も獲っていたし、段々とテンションが上がっていく自分もおった。何とかなるかな、とも思っていたよね。

 阪神移籍後、熱心にイメージトレーニングに取り組んでいたこともあって、開幕前夜もすんなり寝られた。それが…。当日の朝、起きてみたら、えらいことになった。

 テレビをつけてみたら、情報番組はずーっとプロ野球開幕のことを伝えとる。そんなん聞いとったら、急にソワソワして落ち着かなくなっていった。ソファーも同じところに座っていられん。

 ラガーを連れて散歩にも出たけど、それでもダメ。もう、京セラドームへ着く頃には、ほんまに逃げだしたいぐらいになっとったよ。

 試合前から、野手のみんなも、いつもと違って話しかけてこない。いうなれば、ノーヒットノーランがかかった終盤のような雰囲気。俺として声をかけてもらった方が楽やったんやけど、それもなかったな。

 ブルペンで投球練習しても、まぁ落ち着かない。受けてくれた矢野は平然としとったけど、俺はこめかみまで脈打つのが分かるぐらいやった。もう、めちゃくちゃ緊張しとった。

 試合が始まってからも、やっぱり1回表が終わるまではダメやったね。

 「ストライク入るやろか。アウト取れるやろか…」

 ネガティブな言葉が、ぐるぐる頭の中を駆け巡っていたわ。

 それでも、試合は動いていく。最後は「自分のやってきたことを信じるしかないやろ」と言い聞かせた。

 その1回表を三者凡退で終えたときには、もの凄〜い、ため息をつきながらベンチへ戻った。溜まっていたものが、一気に出て行くというのかな。深い、深いため息をついて、やっとのことで気持ちが落ち着いた。

 一般的に、ため息はよくない! と言われとるけど、あれだけは別やわ。朝から突然、わき出たプレッシャー、開幕独特の緊張から開放されたんやから。安心してのため息があることを、そのとき、初めて知ったな。

 そうそう、その試合、つまり07年の開幕戦は、事もあろうに俺がチーム初ヒットを打った。あれだけ、緊張しとったのが、ウソのよう。途中からは間違いなく、俺が一番リラックスできてたよね。

 わざとらしく、野手の前を通り過ぎては「お先、お先!」と言ったりして。たぶん、みんなはイラッときてたはずや。

 結局、俺は6回8安打2失点で、試合にも負けてしまった。疲労度は普段と比べもんにならんかったけど、それ以上に、まぁ悔しかった。中には開幕も144分の1と言う人もおるけど、俺にとっての開幕はやっぱり特別やった。

 「絶対に勝つ」

 そう意気込んでの登板やったから、負けた悔しさも特別やった。ましてや、相手は05年の最多勝を分け合った黒田博樹やったしな。

 引退して、改めて振り返ると、野球人生の中でプロ初登板と同じぐらいの緊張感があった。ダイエー時代、初登板だった1991年8月9日の近鉄戦は4失点で、奪ったアウトは一つ。その時は緊張の対処法が分からずの結果だったけど、07年の開幕は緊張にも対処した上で、チームを勝たすことができんかったから余計に悔しかったんよ。

 今年、阪神の開幕投手だった能見は不本意な結果になってしまったけど、俺は全然心配していない。ここ1、2年、目に見えて心境の変化があるし、能見からは「チームを引っ張ろう」という強い気持ちが見える。

 俺が若手を引っ張ろうとしていたように、今は能見がその役割を買ってでとる。それが、阪神の伝統になってくれたら、これほど嬉しいことはない。しんどいことがほとんどやったけど、真面目に練習して良かったなぁと、今は思うよね。

[ 2014年3月31日 ]

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