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【子どもの健康】未来へ政策進めよう(12月29日)

 東京電力福島第一原発事故発生から間もなく1年10カ月となる。事態長期化による子どもへの悪影響が出始めた。今年度の学校保健統計調査速報で、本県の肥満傾向が判明した。森雅子少子化担当相(参院本県選挙区)はじめ安倍晋三内閣は子育て環境の改善や法整備などを早急に進め、本県の未来を担う子どもの健康を守ってほしい。
 調査速報によると、本県の5歳から17歳までの子どものうち、幼稚園児と小学生で身長別の標準体重より20%以上重い「肥満傾向」の割合が増えた。県教委は、原発事故に伴う屋外活動の制限による運動不足が影響したのではないか-と分析する。
 幼稚園児と小学生、中3、高3で肥満傾向の子どもの割合が2年前より0・3~5・1ポイント増大した。特に小学生低学年で増え、小1は前回比4・7ポイント増の9・7%で全国最低の滋賀県の約5倍だった。
 県教委の調べでは、昨年6月時点で全公立小、中、高校の約56%に当たる449校が学校時間中の屋外活動を制限した。今年9月時点でも小、中71校で制限が続く。肥満は将来的に生活習慣病を発症する危険性が増す。教育や子育てに関する地域の除染、屋内遊び場の一層の整備が喫緊の課題だ。
 放射線の不安解消へ実施している18歳以下の県民の医療費無料化は、肥満に伴う疾病の予防、発見にも役立つ。しかし、無料化の財源はこのままだと約6年で尽きる。
 「原子力事故による子ども・被災者支援法」が6月に成立した。子どもや妊婦の医療費を国の財源で免除、減額したり、被ばくの可能性がある子どもの健康診断を生涯続けたりすることなどを盛り込んだ。森氏が中心となり議員提出した。法を機能させるには、基本方針をまとめ予算を確保する必要がある。民主政権は動きが鈍かった。閣僚として陣頭指揮を執る森氏にも、医療費無料化の財源確保を期待したい。
 除染の加速や医療費無料化の継続ができなければ、子どもたちの県外への流出に歯止めはかからない。県の試算では、原発事故に伴う県内からの人口流出が今後も続けば、約30年後の年少人口(0~14歳)は、現在の約25万人の半分以下の約11万人となる。対策が急がれる。
 本県の復興予算確保には、常に財務省など「官僚の壁」が立ちはだかった。森氏は根本匠復興・福島原発事故再生総括相(衆院本県2区)らと力を合わせ、今度こそ「真の政治主導」で復興時計の針を進めてほしい。(小池 公祐)

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